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巨人・菅野智之も陥った“魔球”の罠。
シーム系の変化球に潜む危険とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2013/05/12 08:01
巨人のルーキー菅野は、6試合に登板してハーラートップタイの4勝(1敗)を挙げ、防御率は2.38(5月9日現在)。入団まで1年間の浪人生活を選択したが、そのブランクを感じさせない安定した投球を見せている。
西武の涌井も、ツーシームの投げすぎが仇に?
西武の涌井秀章投手の不調の原因も、実はここにあるという話を聞いた。
2009年に16勝を挙げて沢村賞を獲得した涌井だが、2011年から成績は急降下。マウンドでもかつての切れのあるストレートが影を潜めて、ボールの威力も変化球の切れも全盛期とはほど遠いものとなってしまったのだ。
その原因がツーシームの投げ過ぎにあったという。
'08年に本格的にツーシームを覚えた涌井は、その新球を使って順調に成績を伸ばしていったが、そこに落とし穴があった。ツーシームの切れを求めて「もっと」「もっと」と投げていくうちに、どんどん身体が開いてひじが下がってしまったわけだ。
その後、そのことに本人も気づいて本来のフォームに戻そうとしているのだが、なかなか元の姿に戻らなくなってしまっている。
広島戦の菅野も6回ぐらいから明らかにひじが下がって、ボールが抜けるようなっていた。スタミナ切れという指摘もあるが、試合後の本人のコメントを聞いて、その原因が分かったような気がしたのだ。
もちろんワンシームやツーシームが悪なのではない。むしろ菅野のように右打者の外角へのカットボールを武器にする投手にとっては、このボールは対になる球種で、うまく操れるようになれば、これほど威力を発揮するボールはないはずである。
ただ、投げ過ぎは禁物かもしれない。
基本はストレート。回転のいいフォーシームを磨くことで、変化球はより一層、打者への威力を増すことになるのである。