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NBAにも『マネーボール』の波が!
グリズリーズを再建したオタクGM。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNBAE/Getty Images

posted2013/05/10 10:31

NBAにも『マネーボール』の波が!グリズリーズを再建したオタクGM。<Number Web> photograph by NBAE/Getty Images

大胆なトレードを繰り返してチームを強化したウォーラス。昨年は、アンファニー・ハーダウェイ、ジャスティン・ティンバーレイクなどが参加したファンドグループがこのチームを買収して話題ともなった。

 今シーズンのNBAプレーオフは、ハンパなく面白い。なぜなら、下位シードのチームが予想以上に健闘しているからだ。

 カンファレンス準決勝は4カードすべてが1勝1敗のタイとなり、予断を許さない状況になった。

 特に注目して欲しいのは、ウェスタン・カンファレンスの第5シード、メンフィス・グリズリーズだ。

 私がこのチームが気になって仕方がないのは『マネーボール』的な発想で強くなったからだ。そう、メジャーリーグの『マネーボール』である。

グリズリーズのGMは、元編集者だった!

 グリズリーズのジェネラル・マネジャー(GM)のクリス・ウォーラスは、ちょっと変わった経歴の持ち主だ。プロはおろか、大学でのプレー経験もない。カンザス大学の学生時代、カレッジ・バスケットボールのほぼ全選手を紹介するイヤーブックの編集者だったのだ。

 カレッジバスケが大好きで、選手の特徴を分析し、それを本にすることが彼のキャリアのスタートになったのである。300以上もあるチームの選手について網羅しているから、本当に便利な本だった。

 実は、この私も1990年代に、東京の洋書店で買い求めてその内容に驚愕した。アメリカにはこんな「オタク」がいたのかと……(その本はまだ自宅の書棚に収まっている)。

 この本の緻密さ、正確さが評価されて、ウォーラスはヒートのスカウトに起用され、セルティックスのGMへと出世し、2007年からグリズリーズのGMとなった。最初の3年間はプレーオフ進出を逃したが、2011年からはプレーオフに連続して出場している。

ESPNなどで健筆をふるったホリンジャーもフロント加入。

 グリズリーズがさらに変化を見せたのは、2012年12月にバスケット・オペレーションのバイス・プレジデントにジョン・ホリンジャーを招いてからである。

 ホリンジャーの前職はスポーツ専門チャンネル・ESPNのNBA担当のライターだった。彼はもともと1990年代にバスケットボールのウェブサイトを立ち上げ、「考えるバスケットボール」を標榜したもので、その後、OregonLive.comというサイトに移ってからスポーツ担当の編集者となり、その時から選手のオフェンスとディフェンスの評価システムを使い始めた。

 これがいまも彼が使っているPlayer Efficiency Rating (PER)というもので、独自の指標として評価され、2000年代は有名スポーツ・ウェブサイトで健筆をふるい、そしてグリズリーズに招かれたのだ。奇しくも、プレー経験の浅い人間であるにもかかわらず、雑誌やウェブサイトで独自の価値観を持ったふたりがグリズリーズのフロントに入ったことになる。

【次ページ】 エース級の選手を放出したトレードの英断。

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