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ヤング・ガンズとサイ・ヤング賞争い。
「投手の年」を制するのは誰か? 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2010/07/31 08:00

ヤング・ガンズとサイ・ヤング賞争い。「投手の年」を制するのは誰か?<Number Web> photograph by Getty Images

賞獲りの本命に躍り出たジョシュ・ジョンソン。 2002年、フロリダ・マーリンズに入団。 15勝5敗、防御率3.23という昨季の成績を上回ることは必至

 2010年7月26日、レイズのマット・ガーザがノーヒッターを達成した。これで無安打無得点試合はMLBで今季5試合目(誤審がなければ6試合目)。「投手の年」と呼ばれた1968年に並んだわけだが、球史を振り返るとまだまだ上がある。比較的最近では'90年と'91年にそれぞれ7度のノーヒッターが達成されているし、時をさかのぼれば、1884年にノーヒッター8度という記録が残されている。

 とはいうものの、'90年や'91年は、とくに「投手の年」というわけではなかった。チーム平均防御率は3点台後半だったし('91年のア・リーグなどは4.10)、投手部門の個人成績もあまり目立たない。強いていうなら、ロジャー・クレメンスが2年連続で防御率第1位に輝いたことぐらいだろうか。

独走かと思われたヒメネスの急失速。

 それにひきかえ2010年は、ヤング・ガンズともいうべき若手有望株の投手を輩出している。ことにナ・リーグのサイ・ヤング賞争いは激戦だ。

 6月中旬あたりまではウバルド・ヒメネス(ロッキーズ)の独走かと思われたのだが、ここへ来て彼の調子がおかしい。この5試合(6月28日~7月24日)で27回3分の1を投げて、自責点22、防御率7.25という数字は惨状と呼ぶほかない。開幕から20試合に先発して合計自責点が41なのだから、これはもう投げ売りではないか。

 映像でたしかめると、投げ方も明らかに崩れている。軸足のタメが弱いせいか上体の開きが早く、彼独特の「球持ちのよさ」が失われているのだ。15勝2敗の成績だけを見ればサイ・ヤング賞は射程圏内と思えるが、このメカニック調整には時間がかかりそうだ。

剛のジョンソンと柔のウェインライト。

 代わって賞獲りの本命に躍り出たのが、ジョシュ・ジョンソン(マーリンズ)とアダム・ウェインライト(カーディナルス)だ。ふたりとも年齢は20代後半。剛のジョンソンに対して柔のウェインライトとイメージは対照的だが、ともに投手人生の頂点に近づきつつあることはまちがいない。

 両者の成績は相似形だ。勝敗数はチームの得点力を反映しているが(ジョンソン=21試合で10勝3敗、ウェインライト=22試合で14勝6敗)、奪三振数(ジョンソン=146、ウェインライト=142)や与四球数(ジョンソン=32、ウェインライト=39)には差がない。ただ私は、防御率(1.72対2.23)やWHIP(1.00対1.03)の低いジョンソンを支持したい。オールスターでイチローから三振を奪った投球もみごとだったが、最近14試合で2点以上を許したゲームが2試合しかないという安定感は、やはり群を抜いている。

【次ページ】 22歳の新星は力感あふれるクレメンス・タイプ。

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