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済美・安楽の熱投が問いかけたもの。
高校野球における「勝利」と「将来」。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2013/04/04 12:15

済美・安楽の熱投が問いかけたもの。高校野球における「勝利」と「将来」。<Number Web> photograph by Kyodo News

決勝戦6回裏が終わった時の安楽と上甲監督。監督から労いの言葉をかけられるも、流れる涙を抑えきれなかった安楽。

エースの投げたい思いを止められる監督はいない!?

 安楽や優勝投手になった小島和哉(浦和学院/埼玉)、安楽に次ぐ球数を投げた岸本淳希(敦賀気比/福井)のように一人の投手で戦うことが高校野球では日常的だ。高野連は複数投手制の導入を各チームに推進しているが、特別な規則があるわけでもないのが実状で、選手のコンディショニングは、チームの決断にゆだねられたままだ。

 済美・上甲監督は、登板過多の安楽の起用について、大会中にこう話していた。

「安楽に『明日いけるか? 大丈夫か?』と聞けば絶対に『無理です』とは言わない。今まで、試合中に肩や肘が痛いと言ってきたことはありませんでしたから。どうしても頑張ってしまう選手なので、こちらがストップをかけてやらないといけない」

 ただ、今大会での起用を見る限りではストップをかけているようにはそれほど思えなかった。決勝戦の5回終了後のやり取りはそれを証明していただろう。

 だが、それは指揮官の資質云々の話ではない。戦いの舞台が大きくなれば、選手は「投げたい」と言うし、選手に猛練習を課してきた指揮官もその思いを知るだけになかなか止めることは難しい。問題なのは、誰もが登板過多だと感じていながら、それを制限するルールが無いことではないだろうか。

 安楽がこの春巻き起こした騒動には、野球界の未来へのメッセージが隠されているような気がしてならない。

 疲弊した中で投げ続け、決勝という最高の舞台で無念にも途中でマウンドを降りる。

 悔しさに顔を歪め、降板に涙した安楽の姿に野球界は何を思うのか――。

 高校野球のあり方を問う時期に、きているのではないだろうか。

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