甲子園の風BACK NUMBER
地方強豪が全国の強豪になるには?
聖光学院で考える甲子園ベスト8の壁。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2013/04/03 10:30
スタンドに礼をした後、引き上げる聖光ナインたち。約4年間、県内公式戦負け無しの誇りと責任をもって、夏の大会で再びベスト8の壁に挑んでほしい。
機動力で甲子園の切符を掴んだが「打てる時には打つ」。
新チーム発足当初から、斎藤監督は選手に「お前たちは弱い」とハッパをかけ続けた。
だからと言って、予選の段階から負けを覚悟するはずがない。
「福島では負けたくない。絶対的な存在になりたい」
斎藤監督は常々、口癖のようにそう言う。弱いチームと自覚しているからこそ、原点の機動力野球で相手を翻弄するのだ。
秋季大会では福島県を制し、県内の公式戦連勝記録を81まで伸ばした。打線の軸である園部が不振だったこともあり、東北大会を通じた秋の公式戦では9試合で22犠打(犠飛含む)、11盗塁。機動力で甲子園の切符を掴んだ。
それでもセンバツでは、「打てる時には打つ」という姿勢を見せてくれた。
初戦の益田翔陽戦で12安打8得点の快勝。2試合目となる鳴門戦では4対3と接戦だったが、園部の勝ち越しアーチを含む10安打と、聖光学院の攻撃野球が機能する。
攻撃的な姿勢を打ち出した準々決勝の「嫌な打線」。
そして迎えた準々決勝の敦賀気比との一戦。
聖光学院、そしてセンバツでは福島県勢初のベスト4を狙うこの局面は、「上のステージに行くため」の絶好の機会である。
「三度目の正直でのベスト4を意識しますか?」
試合前に斎藤監督にそう質問すると、ふふふ、と笑みを浮かべながらこう答えてくれた。
「贅沢は言いません。ベスト8以降は雲の上の存在。選手も一つひとつ勝っていく意識があるから、欲はないですよ」
目標地点への欲はないのかもしれない。ただ、攻撃野球、そして勝利への貪欲な姿勢はスタメンオーダーにはっきりと表れていた。
過去2戦で3番だった八百板を1番に、4番の園部を3番に上げたのだ。
その理由を指揮官はこう説明する。
「調子のいい選手を上位に置きました。1番と3番は多く打席が回ってくる。9回にふたりの5打席目があるようならうちのペースだと思っているし、ほかの選手にも、『全部、初球からバットを振って行くぞ』と言っています。それだけ、相手の岸本(淳希)君がいいピッチャーだということ。彼に『嫌な打線だ』と思わせたいですね」