甲子園の風BACK NUMBER
地方強豪が全国の強豪になるには?
聖光学院で考える甲子園ベスト8の壁。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2013/04/03 10:30
スタンドに礼をした後、引き上げる聖光ナインたち。約4年間、県内公式戦負け無しの誇りと責任をもって、夏の大会で再びベスト8の壁に挑んでほしい。
プロ注目の強打者・園部の存在が攻撃野球への転機に。
一方で、甲子園での試合を重ねるたびに壁を痛感するようにもなってきた。
それは、強豪校と互角に渡り合える打線。
初のベスト8に進出した'08年夏は、名門・横浜の前に1対15と辛酸を嘗めさせられた。2年生エースの歳内宏明を擁し、初戦で広陵、3回戦で履正社と、優勝候補を撃破し8強にコマを進めた'10年も、準々決勝でセンバツ覇者の興南に3対10と圧倒された。
さらには、昨年のセンバツ2回戦で横浜に1対7、夏の2回戦でも浦和学院に4対11と完敗。近年の聖光学院は、攻撃力の差で敗れる試合が目立っていた。
現実は指揮官も痛いほど分かっている。だからこそ、自身が育んできたスタイルにメスを入れる必要性も感じていた。
それは、攻撃力を高め、聖光野球を一段階レベルアップさせること。
昨秋。新チームの発足時点で斎藤監督は、「この5、6年で一番力がない」と分析する。ただチームには、夏に2年生4番として浦和学院戦で本塁打を放ったプロ注目のスラッガー、園部がいる。
発展途上のチームと絶対的な手法の存在。この組み合わせが、あるいは指揮官に改革を決断させたのかもしれない。
監督が目指したのは「攻撃野球と機動力野球の二刀流」。
斎藤監督は、その狙いについてこう語る。
「全国の強打のチームや強打者を目の当たりにすればするほど、『甲子園で勝つためにはスモールベースボール(スモールボール)だけじゃ限界があるな』と。甲子園での敗戦から教訓を得たからね。今までは繋ぎの野球で、例えば、ワンアウト三塁でも4番にセーフティスクイズやゴロを打つように指示していたけど、長距離を打てるバッターがいるならしっかり育てて打つ野球をしていかないと、甲子園でもうひとつ上のステージにはいけないから」
とはいっても、単純に強打のチームにシフトするほど聖光野球は単純ではない。
斎藤監督が描くプランはこうだ。
「打ち合いに持ち込める準備。点差を開かれたときでも、『ガンガン打つよ』という姿勢を出していきたい。ただ、接戦になったら機動力を使うことももちろんある。攻撃野球と機動力野球。この二刀流でチームを作っていきたいとは思っている。指導者としても画一的な指導はしたくないし、子供たちの将来も見据えて色んな野球を染み込ませたいんだよ」