南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
やっぱりオランダはオランダだった。
ウルグアイに辛勝した実力は本物か?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/07 10:50
肝心な時に勝負弱い上に、PK戦に滅法弱いオランダ。
1対1のままハーフタイムに突入したとき、おそらくファンマルバイク監督の頭の中には、延長戦のこと、そしてPK戦のことがよぎったに違いない。
なぜなら、オランダは世界でも有数の「PKに苦手意識を持つ国」だからだ。
1998年フランスW杯では史上最強のメンバーをそろえたと言われながら、準決勝でブラジルにPK戦の末敗退。2000年のユーロでは自国で開催しながら、準決勝でイタリアにPK戦で敗れた。オランダ人の普通の感覚でいえば、絶対にPK戦は避けたいところだ。そのためには後半の45分間で決着をつけなければいけない。
ファンマルバイクはハーフタイムに博打に出る。ボランチのデゼーウに代え、ゲームメイカータイプのファンデルファールトを投入し、システムを4-2-3-1から、4-1-4-1に変更したのだ。
2点リードし、お祭り騒ぎになって油断する……。
ファンデルファールトは最初の時間帯こそ、試合の流れに乗れなかったが、次第にゴール前に侵入できるようになり、それによってウルグアイのブロックに乱れが生まれ始める。
そして後半25分、ショートパスの素早い交換からスナイデルにボールが渡り、右足から放たれたシュートはファンペルシの足をかすめるように地を這い、ウルグアイのゴールマウスに吸い込まれた。
さらにその3分後、動揺するウルグアイの守備陣の隙を突いて、カイトが左サイドからクロスをあげ、ロッベンが頭で合わせてダメ押しのゴール。ロッベンは後半44分にエリアと交代し、スタンディングオベーションに迎えられながらベンチに戻った。オランダはピッチ内もベンチも、完全にお祭りモードになっていた。
オランダ国民は、相変わらず安心して試合を観られない。
ところが、このまま終らないのが、今のオランダである。
後半47分にウルグアイがFKの流れから1点を返し、試合は一転して緊迫したムードに包まれた。ウルグアイはロングボールを放り込み始め、あと50cmこぼれ球がずれていたら、ゴールが決まってもおかしくない場面があった。
オランダは、確かに勝った。
しかし、強いと言い切れるほど、磐石なゲームコントロールはできなかった。
この準決勝を見る限り、決勝の相手がドイツになろうと、スペインになろうと、オランダ国民が安心して観戦できるような試合にならないことだけは間違いない。