南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
スペインがドイツに勝利する条件。
「タイムマシンのスイッチを押せ」
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2010/07/06 12:00
「2008年のスペインは最高のチームだった。が、いまはそんなこともない。我々は決勝へ行ける。そう信じるだけの根拠はある」
うそぶいたのはドイツのレーブ監督。
ここまでの両チームの軌跡を較べると、もっともな意見だ。
今大会のスペインは試合のたびに違った姿を見せてきた。ユーロ2008で優勝した2年前を思わせるサッカーをしたのはグループリーグのチリ戦、決勝トーナメントで戦ったポルトガル戦、パラグアイ戦のそれぞれ後半のみ。
一方のドイツは攻撃的なパフォーマンスが非常に安定しており、素晴らしい試合を続けてきた。おまけにチームの総得点は大会最多の13。スペインは、やはり攻撃第一を謳いながら、半分以下の6得点。
客観的にどちらが有利かと言えば、当然ドイツとなる。
「彼らは今回のワールドカップで一番のチームだ。イングランド戦とアルゼンチン戦のプレーでそれを証明した」
スペインの主将カシージャス自身認めている。
しかし水曜日の現地時間20時半、レフェリーが笛を吹くと同時にスペインが2年の時間を遡り、「最高のチーム」に戻る可能性がないわけでもない。
ポイントは中盤、具体的にはチームのメトロノームであるシャビ・エルナンデスの周囲だ。
イニエスタ+αの存在が滑らかなパスワーク復活のカギ。
イニエスタの他にシャビ・エルナンデスと同じリズムでボールを動かせる選手――シルバかセスク――がもう1人いれば、スペインのパスワークは最高期の滑らかさを取り戻す。前述のチリ戦とパラグアイ戦ではセスクの交代出場が流れを変えた。
さらに、ディフェンスラインに近づきがちなシャビ・アロンソをどんどん前に行かせるようにすれば――そうしてシャビ・エルナンデスに下がるスペースを与えれば、相手が嫌がる1本がぐっと増える。
つまりはデルボスケ監督の采配次第。
監督が中盤のボールコントロールを強化してタイムマシンのスイッチを入れれば、スペイン不利の下馬評は俄然覆るだろう。少なくとも五分五分にまでは戻すはず。
レーブ監督も中盤の争いを重視し、「シャビ(・エルナンデス)&イニエスタと、ケディラ&シュバインシュタイガーの戦いが試合のカギを握るかもしれない」とコメントしている。