南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
やっぱりオランダはオランダだった。
ウルグアイに辛勝した実力は本物か?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/07 10:50
「勝負強い」と言うべきか。それとも、「おっちょこちょい」と言うべきか。
オランダは2点をリードして終盤を迎えながら、ロスタイムに1点を返され、「あわや延長戦か?」というドタバタの展開に持ち込まれてしまった。最後の慌てぶりは、とても優勝を狙うチームの振る舞いではなかった。
ただし、それでもオランダは3対2でウルグアイに競り勝ち、1978年アルゼンチンW杯以来の決勝進出を果たしたことは紛れもない事実である。
はたして、彼らの強さは本物なのか――。
試合にスイッチを入れた、前半のポジションチェンジ。
試合はまるでフレンドリーマッチのような、ゆっくりとしたテンポでスタートした。ウルグアイが得意の“堅守”で、ゴール前にきれいな2ラインのブロックを作り、オランダにスペースを与えない。
一方オランダも、あえてリスクを冒して中央にいる選手に縦パスを出そうとせず、右ウイングのロッベンと、左ウイングのカイトに、“各駅停車”の横パスを出してばかり。観客がブブゼラを吹くのを忘れてしまうほどに、静かな立ち上がりだった。
しかし、ひとつのポジションチェンジが、試合にスイッチを入れることになる。
前半の4分の1が経過した頃、ロッベンとカイトが左右の位置を入れ替えた。ウルグアイの右サイドバックのM・ペレイラは、突如として目の前にロッベンが現れたことに驚いたのだろう。このオランダ産の快速ウインガーに引っ張られるように、ライン際にポジションを取ってしまった。
この結果、オランダの左サイドバックのファンブロンクホルストに、絶好のスペースが生まれた。ファンブロンクホルストはそのスペースに走りこんでパスを受けると、迷うことなく左足を振りぬき、オランダに先制点をもたらした。
「現実路線」を徹底できないオランダの脇の甘さ。
もし本当に強いチームであれば、このまま試合にブレーキをかけ、何も起こらせないまま、勝ち点3だけを手にしようとするだろう。何せ次は決勝なのだ。リスクを冒す必要はない。
だが、いくらファンマルバイク監督が「現実路線」をうたっても、オランダはやっぱりオランダらしく、脇が甘いままだった。
前半41分にDFマタイセンがフォルランのキックフェイントにひっかかり、30メートル級のロングシュートを決められてしまった。GKのステケレンブルクは手で触っただけに「止めるべきだった」との声もあるだろうが、そもそもフリーでシュートを打たれたのが問題だった。