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ウルグアイが籠城作戦に出ても、
オランダの“必勝”戦術は有効か?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/05 11:00
もしウルグアイが勝ち上がるようなことがあれば、W杯史上に残る『ジャイアントキリング』になるに違いない。
7月6日にケープタウンで行われる準決勝・オランダ対ウルグアイは、前者の方が圧倒的に有利と見られている。ただでさえ選手のクオリティーに差があるのに、ウルグアイには離脱者が続出しているからだ。
準々決勝のガーナ戦において、FWスアレスがハンドでシュートを止めて一発退場。左サイドバックのフシーレは通算2枚目のカードをもらい、この2人は準決勝を出場停止になってしまった。
また、スーパーサブ的な役割を果たしていたロデイロが、ガーナ戦で右足を骨折。キャプテンのDFルガノはガーナ戦で右ひざを故障して、出場できるか微妙になっている。
満身創痍の状態で、『ラ・セレステ』(空色)はオレンジ軍団に挑まなければいけない。
過去、圧倒的に有利な試合をとりこぼしてきたオランダ。
思えばウルグアイのこれまでの相手を考えると、フランス、南アフリカ、メキシコ、韓国、ガーナと、正直、対戦相手に恵まれてきた感は否めない。大手ブックメイカーの『bwin』が、ウルグアイ7.00倍、引き分け3.70倍、オランダ1.50倍と、オッズに大きな差をつけているのも当然かもしれない。
しかし、圧倒的に有利と思われているときこそ、オランダは脆さを露呈する――ということも忘れてはいけないだろう。
ウルグアイ戦前の記者会見で、オランダのファンマルバイク監督は強く訴えた。
「私たちは準々決勝でブラジルに勝利したが、こういうビッグマッチの次こそ、最も難しい試合になるということは、私が監督に就任した2年前からずっと言い続けてきた。絶対に油断してはいけない」
オランダ人の脳裏に焼きついているのが、ユーロ2008の苦い経験だ。グループリーグでイタリアとフランスに勝利して調子に乗っていたところ、決勝トーナメント準々決勝でヒディンク監督率いるロシアに延長戦の末に敗れてしまった。それと同じことが繰り返されないとは限らない。
ウルグアイはフランス戦同様、極めて守備的になる。
ファンマルバイクが予感するように、おそらく簡単な試合にはならないだろう。
ウルグアイはグループリーグ第1戦でフランスと対戦したとき、相手のウイングにマークをつける5-3-2という極めて守備的な布陣で臨んだ。彼らのタイトなディフェンスによって、両チームともにほとんど見せ場はなく、0-0で終了した。
オランダもフランスと同じように、サイドにロッベンら強力なウインガーを擁する国だ。ウルグアイは同じ手を使ってくる可能性がある。
では、オランダは、そういう守備的な相手に対して、ゴールを決められるだろうか?