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絶妙のリターンが呼び込んだ3勝目。
錦織圭は「新世代のアガシ」になる!
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAP/AFLO
posted2013/02/28 10:30
全米室内選手権でツアー3勝目を挙げた錦織圭。ビッグサーバー優位な今大会で錦織が全5試合で1セットも与えず優勝を果たしたのは、サービスリターンの好調さにあった。
米国・メンフィスで行われた全米室内選手権で錦織圭がツアー3勝目を挙げた。5試合すべてで1セットも落とさずに勝利。まさに独壇場だった。
フェリシアノ・ロペス(スペイン)との決勝を振り返り、自身のブログに「リターンが良く相手にどんどんプレッシャーをかけていけたと思います」「最後のゲームもブレークで終わらしたのでリターンが勝因でしたね」と書いたように、推進力となったのはサービスリターンだ。
決勝では、相手のサービスゲーム9回のうち4度ブレークに成功。一方、自身のサービスゲームでは、4本あった相手のブレークポイントをしのぎきり、一度もブレークを許さなかった。
相手がファーストサーブをフォールトすると、錦織の得点率は84%に。
素晴らしいスタッツ(統計)が残っている。相手がファーストサーブをフォールトすると、錦織の得点率は84%にまで跳ね上がった。相手のセカンドサーブ時の得点率は5割を超えれば及第点と言える。
ロペスは左利きで、サーブが最大の武器。昨シーズンはツアー12位の543本のエースをたたき込んでいる。そのビッグサーバーを相手に、セカンドサーブ時とはいえ84%の得点率は、常識では考えられない。
「プレッシャーをかけていけた」というように、錦織は序盤から相手のセカンドサーブにアタックをかけ、31歳のベテランはその圧力に押されてプレーが萎縮していった。
ビッグサーバーといえども、セカンドサーブでは相手のカウンターアタックの危険にさらされるため、プレッシャーがかかる。一方、レシーバーも重圧と無縁ではない。セカンドサーブとはいえ、時速170キロ前後のボール。そこに飛び込んでいく勇気、リスクを冒して攻める気概がなければ攻撃は不発に終わる。
メンタルの強さも問われるサーブとリターンの攻防で、完全に相手を制圧した結果が、この84%という数字だ。