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絶妙のリターンが呼び込んだ3勝目。
錦織圭は「新世代のアガシ」になる!
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAP/AFLO
posted2013/02/28 10:30
全米室内選手権でツアー3勝目を挙げた錦織圭。ビッグサーバー優位な今大会で錦織が全5試合で1セットも与えず優勝を果たしたのは、サービスリターンの好調さにあった。
「アガシの新世代バージョン」と、世界ランク6位が絶賛。
大会は室内のハードコートで行なわれた。風の影響を受けないインドアは、トスが安定するため、一般的に強いサーブを持つ選手が有利とされる。4強の顔ぶれも、錦織を除き、いずれも強力なサーブを持った選手たちだ。しかし、錦織は準々決勝でマリン・チリッチ(クロアチア)、準決勝でマリンコ・マトセビッチ(豪州)、そして決勝でロペスと、3人のビッグサーバーをなぎ倒した。グラウンドストローカーの錦織が、ツアー有数のサーブ自慢たちを次々制圧していったのはまさに想定外の事態だった。
昨年の楽天ジャパンオープンで錦織に敗れたトマーシュ・ベルディハ(チェコ、2月25日現在世界ランク6位)は、錦織のプレーをアンドレ・アガシにたとえた。「アガシを連想させるスタイル。その新世代バージョンだ」というのだ。ベースライン後方でボールを待つのではなく、ポジションを上げて早いテンポで連続攻撃を仕掛ける錦織のスタイルがアガシに似ているというのである。
アガシもまたリターンの名手だった。相手のファーストサーブに鋭く反応し、セカンドサーブには積極的なアタックで主導権を握って矢継ぎ早の攻撃で仕留める。言われてみれば、確かに錦織とイメージが重なるところがある。
「リターンが自分の試合のキーになる」とプレースタイルを自覚。
アガシの全盛期は、ピート・サンプラスなどビッグサーバー優位の時代だった。破壊的なサーブを持たないアガシだったが、リターン力と攻撃的なグラウンドストロークで彼らと渡り合った。身長178センチで、サービスエースの量産が期待できない錦織も、身長180センチのアガシと同じ道を歩んでいくことになる。
錦織の父、清志さんは以前、錦織がサービスゲームのキープに苦しんでいるのを見て、「お前はリターン(が武器)なんだから、サーブはそこそこでいい」と声を掛けたという。サーブの改良は課題だとしても、リターンという長所を伸ばし、相手のサービスゲームをブレークしていけばいい、という意味だろう。
当然、錦織自身にもリターンを軸にしたプレースタイルのイメージはあるはずだ。先に引用したブログで錦織はこう書いている。
「楽天の時もそうですけど、リターンが自分の試合のキーになることが多いですね」