野球クロスロードBACK NUMBER
斎藤佑樹は“荒木二世”なのか……。
プロ3年目に問われる復活の選択肢。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/02/05 10:30
大谷らと一緒に2軍でキャンプスタートとなった斎藤。「手術はしない」という判断が、果たして吉と出るか?
「良い投球の感覚」に頼り過ぎることの弊害も。
制球力が落ちてきた。変化球の曲がりが悪くなった。そうなるとまず、原因はフォームにあるのではないか、と考える。肘の位置、グラブを持つ手の使い方に下半身の動かし方……。自分の感覚を頼りに、問題を解消しようとフォームチェックを繰り返す。
その感覚で投げ続けるのが、実は一番怖い。
そう語っていたのは、制球力に定評があるDeNAの三浦大輔だった。
「小手先だけをいじっても意味がないんですよ。投げ方を忘れますから。原因の元になるものを修正していかないと、自分のフォームは固まらないんです。例えば、自分では肘が上から出ていると思っても、他の人が見たら下がっている。その感覚をチェックするために自分のフォームをビデオに撮る。
でも、ただ撮ったものを見るだけじゃダメですよ。『いい感覚だった』と思っても、実際に何球目に投げたフォームが良かったのか分からないじゃないですか。だから、良かったときには帽子のつばを触るとか分かるようにしておく。そうすることによって、いい時と悪い時のフォームを冷静に分析できるから、修正ポイントもはっきりしてくるんです」
いいトレーニングやフォームを信じることそのものは悪くはない。だが、新しいトレーニング理論を取り入れた後も、成果が出るどころか右肩の故障まで被ってしまった。そのことで投げることができず、フォームの修正に着手することすらできないという負のスパイラルに陥って……。
自分がやってきたことを一度全部リセットしてみては?
だからこそ、今までやってきたことを一度、引き出しにしまってみたらどうだろうか。
引き出しとはつまり知識だ。成功も失敗も、その知識さえ頭に染み込ませていれば、いずれ役立つ時がくる。今の斎藤には、自分がやってきたことを一度リセットする勇気が必要なのかもしれない。
三浦はこう話していた。
「若い選手にありがちなんです。周りが指摘してもそれを受け入れずに、自分がいいと思ったトレーニングやフォームを続けてしまった結果、選手寿命を短くしてしまう。僕は、そんな選手を何人も見てきたんです。だから、周りの意見も聞いて、自分と相談しながら色んなものを試して、ダメだったらとりあえずは引き出しにしまっておけばいい。それって、いつか絶対に必要になる時がきますから」