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F1界のプロフェッショナリズムとは?
ヒュルケンベルグと可夢偉の有終。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byAFLO

posted2013/01/10 10:30

F1界のプロフェッショナリズムとは?ヒュルケンベルグと可夢偉の有終。<Number Web> photograph by AFLO

ブラジルGPで、攻めに攻め続けたヒュルケンベルグがクラッシュした瞬間。ドライバーの安全性が高まったとはいえ、これだけアグレッシブな走りをするのは間違いなく“命懸け”のレベル。

ヒュルケンベルグの野望を砕いたのが、可夢偉だった。

 その後、47周目まで29周に渡ってトップを走り続けたヒュルケンベルグ。しかし、このヒュルケンベルグの野望を打ち砕いたのが、可夢偉だった。

 たとえヒュルケンベルグが優勝して25点を稼いでも、ザウバーも入賞して加点すれば、25点差を逆転されることはない。ヒュルケンベルグがトップを走っていたころ、可夢偉は入賞圏内を走行していた。

 じつはザウバーにとっても、最終戦はコンストラクターズ選手権において重要な一戦だった。それは選手権5位のメルセデスAMGと12点差で迎えていたからである。

 メルセデスAMGは中国GPで優勝しているため、ザウバーが逆転するにはブラジルGPで13点以上、つまり表彰台を獲得することが絶対条件だった。ヒュルケンベルグがトップを堅持していたレース中盤、可夢偉のポジションは6番手。しかし、23周目にセーフティカーが導入され、トップ5との差が一気に縮まる。そして、レースが再開された30周目、可夢偉もまたヒュルケンベルグ同様、タイトル争いをしていたセバスチャン・ベッテルをオーバーテイクする。さらに、2周後にはタイトル争いをしていたもう一人のドライバーであるアロンソもオーバーテイクして4番手に浮上。表彰台まで、あと一歩に迫っていた。

最終戦、チーム代表を涙させた可夢偉の走り。

 だが、2人の挑戦もそこまでだった。

 トップを走行していたヒュルケンベルグは、48周目にハーフスピンを喫して首位の座をハミルトンに明け渡してしまう。その後、再び猛追して55周目にオーバーテイクを仕掛けるも、クラッシュ。なんとかレースを続行できたものの、クラッシュした責任を問われ、ドライブスルー・ペナルティを科せられて5位に終わった。

 しかしレース後、フォース・インディアのスタッフは、ヒュルケンベルグを讃えた。「あのとき、俺たちには優勝しかなかった。勝ちに行ったニコをだれも恨んでいない」と。

 そして、可夢偉。

 セーフティカー解除後に、タイトル争いをしていた2人を相次いでオーバーテイクしたが、その後、地力で勝る2人に逆転を許し、最終的に9位でフィニッシュした。それでも、去りゆくチームのために、懸命にランキング5位を目指して走った可夢偉を、チームスタッフは拍手で出迎えた。その光景を見て、可夢偉放出の最終決定を下したチーム代表のモニシャ・カルテンボーンは、涙した。

 最後の瞬間までチームのために全力を尽くした2人のプロフェッショナル。新たな挑戦に期待したい。

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