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F1にシーズンオフの文字はない──。
2013年の戦いはすでに始まっている! 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byGetty Images

posted2013/01/07 10:30

F1にシーズンオフの文字はない──。2013年の戦いはすでに始まっている!<Number Web> photograph by Getty Images

昨季最終戦のブラジルGPで年間王者3連覇を決めたセバスチャン・ベッテルを称えるエイドリアン・ニューウェイ。

 11月25日に2012年シーズンの最終戦が終了したF1は、いまオフシーズンの最中にある。オフシーズンというと、まるで「お休み」のような響きがあるが、この時期のF1は新車の製作の真っ只中にあり、シーズン中にも負けないほど忙しい。新年は1月1日の一日だけが休日で、2日が仕事始めというチームがほとんどだ。

 F1はスピードを競うスポーツである。しかし、それは何もコース上だけの話ではない。いかに早くマシンを仕上げるかという時間との戦いでもある。それゆえ、オフシーズンといえども、F1で働く者たちはシーズン中と変わりなく仕事を続ける。それはF1マシンを製作するという仕事だけでなく、F1そのものが「早さ」との戦いの中にあるといってもいいだろう。これから触れる人々は、まさにいまその戦いの中にあり、クリスマス休暇やお正月も関係なく、慌ただしい年末年始を送っていたことだろう。

鬼才ニューウェイ率いるレッドブルに3連覇の余韻なし。

 まず、レッドブルのチーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイだ。'10年から3年連続でチャンピオンマシンを作り続けているニューウェイ。現在のF1のデザイナーの中で、もっとも成功を収めている天才が現在、一番気にしていることは新車の開発の進捗状況だろう。

 新車の開発は約1年前からスタートしている。初期段階はまだコンピュータ上での作業だが、夏場からは風洞実験も開始される。そのため、通常であれば、ファクトリーのスタッフたちの仕事は夏場以降から徐々に翌年の開発へとシフトしていく。ところが'12年シーズン、終盤に大逆転を演じたレッドブルは、最終戦まで'12年型マシン「RB8」の開発の手綱を緩めなかった。

 しかも、終盤戦はフェラーリよりは優っていたものの、マクラーレンには遅れを取っていた点も気になる。最速マシンではなかったRB8の信頼性向上に時間を費やさなければならなかった'12年終盤のレッドブル。3回しか予定されていないウインターテストの初日に新車を投入することができるのか。ニューウェイ以下、レッドブルのスタッフに、3連覇の余韻に浸る暇などない。

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