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<少なく食べて、なぜ動ける?> 小食アスリートの研究。~ボートレーサー・後藤翔之選手~
text by
成田智志Satoshi Narita
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2013/01/06 08:00
フェンシング・太田とも争ったほどのスポーツ万能人間。
実は後藤選手、小中学生の時代はフェンシングに打ち込み、あの五輪銀メダリストの太田雄貴と争い全国3位に輝いた経歴の持ち主である。そしてサッカーの名門校に進学したというスポーツ万能人間なのだ。
「サッカー選手時代はよく食べていましたから、やまと学校(ボートレース選手の養成学校)の入校資格の体重55kgをクリアするのに苦労しました」
小食生活が苦にならなくなったのは、デビュー2年目になってからだという。
この点について、栄養生理学の専門家である笠岡誠一准教授(文教大学健康栄養学部)は、「後藤選手は小食を続けることで、徐々に胃が小さくなったと考えられます。胃が小さいと少ない食事でも胃壁が膨張して脳の満腹中枢を刺激するようになりますからね」と少ない食事に慣れていく仕組みを説明する。
「もちろん、いくら小食で満腹感が得られるといっても、日々、厳しいトレーニングを重ね、本番の舞台に臨んでいるプロの選手が基礎代謝程度のカロリー量で元気に活動できるというのは、栄養学の常識からすれば信じられないことです」
足し引きの勘定が合わないのだから、当然である。
では、なぜあり得ないことが起きているかというと、小食のアスリートたちは少ない食事でも効率よくエネルギーに変換できる体質に変化しているのではないかと考えられるのだ。