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<少なく食べて、なぜ動ける?> 小食アスリートの研究。~ボートレーサー・後藤翔之選手~
text by
成田智志Satoshi Narita
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2013/01/06 08:00
アスリートの中にはそんな生活を続ける人たちがいる。
医学の常識に反するそんなことがなぜ可能なのだろう?
雑誌Number Do『体が変われば人生が変わる!?』より、特別公開します!
人間が生きていくには成人男性で約1500キロカロリーの食事を1日に摂る必要がある。身体を動かさず、じっとしているだけでこれだけの熱量が生存のために消費されるのだ。これが「基礎代謝」だ。女性ならば基礎代謝は1200キロカロリーほどとなる。
「1日の労働」に相当するカロリーはシャケ弁1個程度……。
普通の生活ならば、歩いたり働いたりするから必要なカロリー量はもっと増える。といっても事務職の男性ならば1日に2300キロカロリー程度あれば十分であり、基礎代謝に上積みされるのは800キロカロリーにすぎない。シャケ弁が800キロカロリーほどだから、1日の労働に相当するカロリーが400円のシャケ弁1個相当とは悲しいような、得してるような……。
もちろん、激しいトレーニングを積むプロのスポーツ選手ともなれば一般人の数割増しから競技の種類によっては3~4倍のカロリーを摂らなくてはいけない(北京五輪で競泳8冠のマイケル・フェルプスに至っては1日に1万キロカロリー以上!)。
ところがである─世の中には基礎代謝プラスαのカロリー量しか摂らずに第一線でプロとして活躍しているスポーツ選手がいる。
たとえば、バレエダンサーは練習場の床に汗で水たまりができるほどの激しいレッスンを朝から夕刻まで連日こなしているにもかかわらず、3食合計が1400キロカロリー程度の食事で平気なのだ。
一般人ならば運動どころではなく低血糖で倒れるか、脳に栄養がまわらず意識低下を招くはずだが、今回取材した人たちの身体は皆、健康で美しく、第一線のプロに必要な高いレベルのフィジカルを維持している。
メンタルの面でも充実しており、高度な競技レベルを維持するモチベーションや激しい競争を勝ち抜く闘争心を備えている。
彼らがわずかな量の食事で、その肉体と精神力を維持できる理由はなにか?
「小食のアスリート」が存在する秘密に迫ってみよう。