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平野美宇/卓球
「天才少女の粘りを生むネバネバ食」 

text by

芦部聡

芦部聡Satoshi Ashibe

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photograph bySatoshi Ashibe

posted2010/05/18 06:00

平野美宇/卓球「天才少女の粘りを生むネバネバ食」<Number Web> photograph by Satoshi Ashibe

「将来の目標はオリンピックの金メダル」と大志を抱く

―――非凡な集中力を発揮する天才小4女子―――

 暑いぐらいの春の日差しは、徹夜明けの身には睡眠導入剤のような効き目がある。居眠り防止のミントガムを噛みながらハンドルを握っていると、陽光に輝く富士山が目に飛び込んできた。その美しさに目がさえる。

 山梨県中央市にある平野家の応接間には、ひな人形が飾ってあった。桃の節句が終わったらすぐに片付けないと、女の子は婚期が遅れるといわれているのになあ……。

「山梨ではね、ひな祭りは4月3日にやるの」

 お茶を持ってきてくれた、平野美宇ちゃんが地元の風習を教えてくれた。彼女はちょうど10歳になったばかりの小学4年生だ。小2のときに全日本卓球選手権ジュニアの部に史上最年少で初出場、高校生を相手に初勝利を挙げ、福原愛選手が小4でつくった記録を塗り替えた、早熟のアスリートである。かわいらしいお嬢ちゃんが凄いもんだ……とおじさんの心持ちで感心していると、お母さんの真理子さんが台所から声をかける。

「美宇ちゃーん、朝ごはんができたから食べなさーい」

 ピザトーストを口にすると、食べ終わるまで他のおかずには箸をつけない。つぎに目玉焼き、ウインナーと、課題をひとつひとつクリアしていくような個性的な食べ方をする。

「学校の給食はちょっとずつ食べるんだけど、ホントはこうやって食べるのが好きなの」

 横で見ていたお母さんは「小さいときからこの食べ方なんです。変わってるでしょう」と笑う。何事にも集中する性格なのだろうか。

天才少女が受け継ぐ名門卓球一族のDNA。

 お皿を片付けると、出かける用意をはじめた。朝9時半から、自宅から車で5分ほどの場所にある「平野英才教育研究センター卓球研究部(平野卓研)」で練習がある。この高尚な名称の卓球教室は、美宇ちゃんのご両親がつくった卓球版虎の穴だ。

 平野家は筋金入りの卓球一家で、内科医の父・光正さんは、筑波大時代に全日本選手権2回戦に進出し、元小学校教師の母・真理子さんも全国教員大会でベスト8まで進んだことも。美宇ちゃんは天才になるべくして生まれてきたのかもしれない。

「親からすると、ぜんぜん天才だなんて思わないんですけどね。美宇は3歳で卓球をはじめたんですが、集中力はずば抜けていました。ふつうはすぐに飽きて遊んだりするものなのに、美宇は一心に練習する。他のお子さんと違う点を挙げるとすれば、そこかもしれません」

【次ページ】 「練習はいやじゃないよ。卓球が好きだから」

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