欧州サムライ戦記BACK NUMBER
もうサイドバックの選手じゃない!?
進化した長友のエリアは“ゾーンF”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAP/AFLO
posted2012/12/20 10:31
最近はMFのメッザーラとして先発することが増えている長友。インテルは長友と2017年までの契約合意ができたらしく、年明けにも正式発表される見通し。
長友佑都の進化が止まらない。
スクデット・レースで首位ユベントスを追うインテルの主力として奮闘を続ける中、彼のプレーエリアは大きく前へ移動した。
今、長友佑都の主戦場は、ハーフウェイラインより前方にある。
もはやサイドバックというより、攻撃重視のウイングハーフといった方が近い。
イタリア語で表すと“メッザーラ”というポジションだ。ストラマッチョーニ監督からも頼りとされる不動のレギュラーとして、長友は新たな境地を開きつつある。
「3-4-1-2」と「3-5-2」を使い分ける現在のインテルにあって、“メッザーラ”長友の攻撃プレーオプションは「タッチライン際を縦へ突破」し「ペナルティエリア手前で切り込んでのシュートもしくはクロス」、もしくは「敵陣最深部まで進入後、ニアポスト近辺まで切り込んでのクロスかシュート」の3つに集約される。
左サイドで躍動する長友の一連のプレーエリアを長短3辺に見立てると、「F」の字状になる。
長友の新たなポジションを象徴する“ゾーンF”の意味。
この「ゾーンF」では、ポジションが前に上がったことでサイズのハンデは抑えられ、むしろ一対一で仕掛ける場面では低重心が活きる。
守備の場面では自陣に素早く戻り、左CBのフアン・ジェズスのフォローをこなすが、カウンターで再び前線へ特攻するや「ゾーンF」を攻略して、決定機へ絡む場面が増えた。
先発を温存されたELグループリーグ最終節ネフツチ戦では、後半8分から途中出場すると、1分も立たないうちにFWリバヤへ電光石火のアシストを決めた。
敗れはしたものの、17節ラツィオ戦でも前半から積極的に仕掛けた。
後半27分、左サイド最深部からペナルティエリア内へ抜けると、右ポストに当たったFWカッサーノのシュートの跳ね返りへ鋭く詰めている。