ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
3ゴール、5アシストで前半戦終了。
清武弘嗣を覚醒させた、ある試合。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/12/21 10:31
11月28日のホッフェンハイム戦でゴールを決めた清武。この試合の清武にキッカー誌は1.5点と高評価、ビルト紙は最高評価となる1点を付け(共に最高点は1点で最低点は6点)、第14節のベストイレブンにも選出した。
チームの命運を握る助っ人として、これまでブンデスリーガにやってきた日本人選手とは比べものにならないほどの期待を集めた清武弘嗣のシーズン前半戦が終わった。ここまでのパフォーマンスを振り返ってみたい。
ロンドンオリンピックに参加したために、プレシーズン期間に出場できた練習試合は、わずかに1試合だけ。しかも、その1試合はオリンピックが始まるはるか前、7月に行われた。そうしたハンデがありながらも、風邪によるコンディション不良で欠場した1試合以外は、16試合すべてに先発を果たし、3ゴール、5アシストをマークした。
「まぁゴールとアシストで5-5(それぞれ5つずつ)いきたかったんですけど、ゴールが2点足りなかった。後半戦で巻き返します!」
清武は反省を口にするが、14位と低迷し、不本意な残留争いを続けるチームの中で、最低限の責務は果たしたといえる。では、もう一歩、上を目指すためには何が必要なのだろうか。
冷静に右足で決めた、愛息に捧げるバースデーゴール。
9月15日にボルシアMGを下してから、11月3日のヴォルフスブルク戦で勝ち星をつかむまで、およそ2カ月にわたってチームは勝ち星から見放されていたが、その時期に清武は個の力を上げたいと話していた。ニュルンベルクに来てから任されるようになったFKやCKなどのセットプレーからゴールを演出したものの、なかなか、自身が思い描く場面を作り出せないでいた。それがようやく実現したのは、前半戦も後半に入った11月28日のホッフェンハイム戦のことだった。
前日に誕生日を迎えた愛息のために、絶対、ゴールを決める。そう誓って臨んだ試合で、FKから決めたゴールを含む2ゴールの活躍を見せた。圧巻だったのは、後半41分のプレーだ。
右サイド、ペナルティエリアの手前でボールを受けると、中央へドリブルで運んでいく。ゴール正面にくると切り返し、自分がたどってきたコースに戻るように動き、右足で冷静にゴール右隅に蹴り込んでみせた。
「いやー、意外に冷静でしたね。いつもだったらたぶん左で打ってると思うんですけど、今日は冷静でした。でも、ホント、良かったです。バースデーゴールになって」
そう振り返ったゴールは、ニュルンベルクでさらなる成長を遂げるヒントとなったはずだ。