MLB東奔西走BACK NUMBER
マイナーリーグは本当に過酷なのか?
大谷翔平がもし渡米していたら……。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/12/23 08:01
2008年に新日本石油ENEOSからNPBを経ずに、レッドソックスと直接メジャー契約をした田澤純一。メジャー入りに際しては“田澤問題”として騒がれ、これを受け「NPBを経由しない、海外球団からの出戻り」への対抗措置が講じられた。
日本球団の一軍よりも充実しているマイナーの練習環境。
特に、近年のキャンプ施設の充実ぶりには目を見張るものがある。中でもキャンプ地はどのチームもマイナー専用の施設を構え、その設備は日本の一軍キャンプよりも充実している。その背景には、ここ数年アリゾナがキャンプ誘致に積極的で、次々に最新の施設を建設したことがある。それに触発されるように、フロリダでも施設の新設、大改装の動きが広がることとなった。現在ではほとんどのチームがメジャーとは別にマイナー専用の施設を設け、何面も使用できるグラウンド、メジャーとは別のウェート施設やトレーナー室を完備するまでになった。
仮に大谷があのままメジャー入りしていたならば、高卒選手として3月から6月中旬までのキャンプに参加し、さらに同じキャンプ施設で行なわれる約2カ月半のルーキーリーグに所属するのが既定路線だったはず。つまりシーズンを通して充実したキャンプ施設で野球に集中できる環境に置かれていたわけだ。
「指導法の優劣」というよりも、「指導法の違い」と言うべき。
それでは実際マイナーに所属する日本人選手たちは自分たちの境遇をどう感じているのだろうか。そこで今年マイナーでプレーしていたある日本人選手に意見を聞いてみた。
「マイナーのキャンプは、とても良い練習環境が整っています。一つのチームが7面ものグラウンドを所持していますし、ブルペンも多くあるので、全員がとても効率よく練習ができますし。それに、トレーニングルームやトレーナールームも充実していますよ。だから、選手達は短い時間でも集中してトレーニングを積むことができるんです。練習は、朝7時から始まりお昼には全メニューが終了しています。日本と違い短時間ですが、その分、一つの練習に集中して効率よく行なうことができますね。
コーチの指導は、日本と違い個性を伸ばす指導法と言えます。日本はどちらかというと手取り足取り教えますが、こちらのコーチはアドバイス程度。日本人の感覚からすると不安になるくらい少ない指導量ですが、その分、自分で考えながら練習ができるため、それぞれが型にはまらず自分にあった投げ方、打ち方を見つけることができます。
ブルペンでの投球練習の際は、後ろで見ているだけで、終わった後にアドバイスをしてくれます。日本とは違いシャドーピッチングの時に修正されることが多いので、球数の制限以上は絶対に投げません。それにより毎日のキャッチボールが非常に大事な事に気付かされたり、集中して練習を行なうことができていると思います」