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マラドーナを超えてスクデットへ!
ついに本気になったナポリの快進撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/12/11 10:30
ゴールを量産して異例の評価を受けるFWカバーニ(手前)と、中盤のリーダーとしてチームの鍵を握るMFハムシク。
度重なるトラブルにも動じない、荒削りなたくましさ。
今季、クラブを襲った災難は指揮官の健康不安だけではない。UEFAからは「本拠地サン・パオロの観客席が安全基準を満たしていないため、スタンドの大部分を閉鎖せよ」との通告が届いた。2年ぶりにELに挑んでいるナポリにとってチケット収入激減のピンチだったが、急遽作り上げた改修計画を提出し、視察団を受け入れ、ようやく再認可を受けた。ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、今度は元選手による八百長未遂疑惑に巻き込まれ、今も法廷闘争の最中だ。
北の3強ほどスマートになれないナポリには、この手のトラブルは毎年付き物だ。歩みは順調のように見えて、その実、日々の逆境を乗り越えながら身につけてきた荒削りの強さには年季が入っている。現在のナポリは、一朝一夕に出来上がったチームではない。
目先の勝敗にとらわれず、三つ巴の優勝争いに持ち込む。
王者ユベントスへの挑戦権をかけた16節インテル戦もタフな試合になった。敵地サン・シーロで相手の組織化されたプレスに手を焼き、ラストパスとフィニッシュの精度に欠けたナポリは、1対2で敗れた。
試合後、さぞ顔を真っ赤にしてイラついているかと思いきや、指揮官は意外にも平然とゲームを振り返った。今季こそ本気で優勝を目指しているからこそ「まだ先は長い」とマッツァーリは慌てない。
「結果は残念だが、チームの出来は悪くなかった。昨季のユーベや2年前に優勝したミランの勝ち点ペースと比べても決して劣っていない。ナポリは確実に昨季より強くなっている」
ナポリっ子たちは気づいているだろうか。一昨年、優勝争いに不慣れだった選手たちは“口にしたら願いは叶わない”というジンクスのために「スクデット」を禁句にした。結局はそのナイーブさゆえに優勝を逃したことをカバーニたちが忘れているはずがない。マッツァーリや選手たちにとって、スクデットはもはや禁句ではない。
来年春、ユベントスとインテルには本拠地サン・パオロでのリターンマッチで煮え湯を飲んでもらう。三つ巴の優勝争いこそ、本気のナポリの望むところだろう。