プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーCL制覇功労者も解任!
“嫌われ者”ベニテス新監督の評判。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2012/12/07 10:30
初采配となった13節マンチェスター・シティ戦でベンチから指示を出すベニテス。昇格組のウェストハムに逆転負けを喫するなど、就任からリーグ戦3試合で2分1敗とチームの調子はなかなか上がらない。
さすがはチェルシー。ファンの1人として、そう自嘲せずにはいられない。
11月21日のロベルト・ディマッテオ監督解任。
プレミアリーグでは、首位の座から滑り落ちていたとはいえ、トップに4ポイント差の3位につけていた。CLでは、自力でのグループステージ突破は不可能となっていたが、そもそも、昨季終盤に助監督から暫定監督となったディマッテオの下で、CL王者になっていなければ、今季は参戦すら不可能だった。前任者の下での低調が響いたチェルシーは、CL出場圏外のリーグ6位に終わっていたのだから。加えて、ディマッテオは、現役時代からの“チェルシー・レジェンド”でもある。
そのディマッテオの首が、開幕からたったの3カ月で飛んだのだ。
たしかに、クラブを牛耳るロマン・アブラモビッチが、ディマッテオを信頼し切っていないことは、崩壊寸前とまで言われたチームを、CLとFAカップの二冠に導いた後、正監督任命に1カ月を要した事実からも明らかだった。とはいえ、ロシア人オーナーの手による、過去9年間で8度の監督交代劇の中でも、最も冷酷な解雇と言わざるを得ない。
宿敵リバプールの元監督をサポーターは総スカン。
おまけに、後任はラファエル・ベニテスときている。
母国では、バレンシアを率いてリーグ優勝2回とUEFAカップ(現EL)優勝を実現し、イングランドでも、リバプールをリーグ2位とCLを含むカップ選手権優勝に導いた戦術家だが、チェルシー・ファンにとっては、宿敵リバプールの元監督でしかない。
当時のベニテスは、チェルシーを率いていたジョゼ・モウリーニョ(現R・マドリー監督)との舌戦の中で、相手サポーターにも戦いを仕掛けた過去がある。有名なところでは、「ウチのサポーターは、プラスチックの旗がなくても応援できる」という発言。チェルシーが、CLでの対戦時に、プラスチック棒のついた応援旗をファンに配布したことを馬鹿にしたものだ。
モウリーニョは、相手チームに神経戦を仕掛けても、相手サポーターを侮辱することはしなかったというのが、チェルシー派の見解。西ロンドンの衆は、超えてはならない一線を超えた「敵将」を許していない。