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マラドーナを超えてスクデットへ!
ついに本気になったナポリの快進撃。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/12/11 10:30
ゴールを量産して異例の評価を受けるFWカバーニ(手前)と、中盤のリーダーとしてチームの鍵を握るMFハムシク。
リーダーを自任するハムシクが中盤をまとめ上げる。
「今は自分が中盤のリーダーだという自覚がある。今季はタイトルを最後まであきらめない。欲しいのはバロンドールじゃなく、スクデットなんだ」
2列目から相手ゴールを急襲、今季すでに7ゴールを挙げているMFハムシクは攻撃センスに優れ、国内外の評価も高い。ミランやマンチェスター・Cが食指を動かしたこともあるスロバキア代表は、奇抜なモヒカンヘアとは裏腹に生真面目なチームプレーヤーとして知られている。
ハムシクは、ナポリがセリエAに昇格した'07年夏に加入した。以来、5年以上に渡ってクラブのステップアップをわが身で担ってきた自負がある。チームへの思い入れは人一倍強い。
マッツァーリ監督は心身を削ってスクデットにかける。
地元出身の主将カンナバーロが仕切る3バックも円熟の域に達し、失点の少なさは今季もリーグ屈指を誇る。
各ポジションにリーダーとなる人材を揃えるのには時間がかかった。経験の浅いチームでは、ハイレベルのコンペティションを2つ同時に戦うことは至難の業だ。
昨季初挑戦のCLに挑むにあたり、国内リーグを犠牲にすると公言した指揮官は、その代わりに欧州16強入りを見事果たした。ELに回った今季、マッツァーリはやはり二兎を追わず、ターゲットをスクデットに絞ることを明確にした。積み重ねた経験値によって手応えをつかんだ選手たちも「いよいよか」と目の色を変えた。
期待が高まれば、プレッシャーとストレスも強くなる。
11月初旬、マッツァーリ監督が心臓の冠状動脈症の検査入院をしたときには、すわ緊急手術か、と周囲に大きな動揺が走った。トリノ戦でキャリア通算20回目のレッドカードを受けたほど激情家の彼が、ナポリを率いて4シーズン目になる。サポーターからの過度の応援によるストレスに抗いながら、全身全霊で仕事に打ち込んできた結果、体の方が先に悲鳴を上げ始めた。
マッツァーリは今季終了後に一時休養もほのめかしている。ナポリで何事か成そうと思えば、文字通り、心身を削る覚悟が必要なのだ。