野球善哉BACK NUMBER
「斎藤世代」だけじゃない!!
ドラフトの目玉はPLの吉川大幾。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/06/23 13:10
今のプロ野球には「右打ちの野手」が求められている。
その3人とは、長野久義(巨人)、荻野貴司(千葉ロッテ)、藤川俊介(阪神)である。
長野は、一時期ほど好調ではないが、巨人には欠かせない選手の一人となっている。外野ならどこでも守れるユーティリティー性とすでに2個の補殺を記録した肩、率より勝負強さで光るバッティングは8本塁打を記録している。昨日(6月22日)は3打点の活躍だった。
荻野は、現在は故障離脱中だが、以前のコラムでも書いたように、シーズンの序盤戦を足で席巻した。俊足を生かした守備や、捕球から送球までのスピードで魅せるスローイングも、彼の持ち味だ。
藤川は守備固めの出場ばかりだが、ザルのような阪神外野守備陣には貴重な存在だ。外野はどこでも守れ、守備範囲も広い。途中出場が多い中、補殺も1個記録している。ルーキーイヤーにして、阪神守備陣の切り札的存在である。
3人に共通するのは「右打ちの野手」であるということだ。昨年のドラフト直後のコラムでも書いたが、今のプロ野球には右打ちの野手が求められている。
3人に実力があったのは紛れもない事実だが、キャンプから一軍に入り、今の立場を確立できたのは、そうしたコマ不足の状況があり、期待にしっかり応えたからだろう。
2年生で中田翔やT-岡田と並ぶ記録を達成した吉川大幾。
そこで、この秋のドラフトである。
まさしく人材は大学生を中心に「豊作」と言えるのだが、右打者の需要が大きい中、投手陣に逸材が多い「斎藤世代」という流れだけで、ドラフトを片付けてしまっていいのだろうかとも思うのだ。この春、長野や藤川の活躍を脳裏に浮かべながら、高校生のあの男の姿を見て、改めてその想いを強くした。
三拍子がそろうPL学園の遊撃手・吉川大幾の活躍である。
吉川は右打ちの野手であり、現在は遊撃手を守るが、2年秋まではセンターを守っていた。内・外野どこでも守れ、バッティングにおいては、昨夏の大阪府大会で5本塁打を記録。ちなみにこの記録は、中田翔(日ハム)、T-岡田(オリックス)に並ぶ数字で、しかも、彼らが記録したのが高校2年時で、吉川も同じく2年で達成したという奇縁もある。吉川は中田やT-岡田とは違う巧打者タイプだが、175センチの身体でもボールを遠くに飛ばせるリストの強さにスカウトも目を見張っている。
積極的に次の塁を狙う走塁面においても、一塁到達が4秒台前半で駆け抜け、エリート選手にありがちな手抜き走塁が見られない。さらに、彼を推したいのは、その意識の高さである。プロの世界で通用していくであろう期待を抱かせる、意志の強さが感じられるのだ。