南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
退場者続出の南アにおけるジャッジ。
岡田ジャパンの意外な弱点がそこに!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2010/06/22 11:15
およそ3分1の確率で、出場32カ国が悲劇に襲われている。
21日までに消化された32試合(ちょうど大会の半分である)のうち、実に10試合で退場者が出ているのだ。
退場者を出した10チームのなかで、敗戦を逃れたのはわずかに3チーム。勝利が決定的な終盤にカカが2枚目のイエローカードを受けたブラジルと、キューウェルを欠きながらガーナと勝ち点1を分け合ったオーストラリア、そして途中出場した新鋭MFロデイロがわずか18分間で退場してしまったがフランスと引き分けたウルグアイである。残りの7チームは、対戦相手に勝ち点3を差し出すことになってしまった。
ゴールライン上で相手のシュートを阻止したキューウェルのようなケースであれば、どうにかして納得できるかもしれない。得点に直結する反則がレッドカードの対象となるのは、周知の事実だからだ。
監督や選手が割り切れないのは、主審によって判定基準が異なることだろう。試合をコントロールする彼らもロボットでないから、判定に微妙なズレがあるのは当然だ。それにしても、そこまで厳密にカードを出す必要があるのか、と思うシーンが少なくない。フェアプレーが優先される代償としてカードの乱発を招き、興味が削がれてしまったゲームは確実にある。
主審の性格を事前に調査し対策を練ることで試合が変わる。
21日に行われたグループHのチリ対スイス戦では、9枚のイエローカードが出され、スイスのベーラミが一発レッドで退場となった。10人になったスイスには相手の攻撃をしのぐしか手立てがなくなり、0-1で敗れている。
この試合のホイッスルを吹いたカリル・アルガムディ氏は、フランス対メキシコ戦でも左胸のポケットから黄色いカードを6度取り出した。付け加えれば、3月23日に等々力で行われた川崎F対メルボルンのAFCチャンピオンズリーグで、イエローカード9枚、レッドカード2枚という大荒れのゲームを作り出したのがアルガムディ氏である。
過去の試合から判定基準の傾向を読み取り、事前に対策を練ろというのは簡単だ。不用意なファウルに気をつけるべき、というのも当たり前過ぎる。
そもそも、必ずしも主審を責められないケースだってあるだろう。たとえば、ドイツ対セルビア戦のクローゼだ。
駆け引きに勝ったスタンコビッチ、負けたクローゼ。
37分に受けた2枚目のイエローカードは、スタンコビッチを後ろから倒したことによるものだった。センターサークル内からドリブルで持ち出した相手のボールを奪えば、そのままカウンターへつなげられる。クローゼでなくてもボール奪取を試みたくなるだろう。
スタンコビッチが意図的にファウルを誘ったのかどうかは分からない。この試合をさばいたスペイン人の主審は、すでに5人の選手にイエローカードを出していた。クローゼもそのなかに含まれていた。セリエAで10シーズン以上プレーしているキャリアを持つスタンコビッチなら、相手がファウルしたくなる状況を作り出したと想像するが、ボールを失うリスクも少なくない。危険との背中合わせだ。