プロ野球亭日乗BACK NUMBER
第3回WBCの“スーパーサブ”は誰?
侍ジャパンの命運を左右する脇役達。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/27 10:30
第1回WBCで、谷繁、和田一浩らとともに「いらん子軍団」と自嘲しつつレギュラーメンバーのサポート役に回った宮本。注目の第3回WBCメンバー発表は11月30日だ。
チームの苦境に、控えの和田一浩が流した涙の重み。
試合にも出られない。
練習もまともにできない。
「俺たち“いらん子軍団”だから……」
自嘲気味にこう言い合っていた3人だったが、だからと言って決してそっぽを向いたり、いじけて身勝手な行動をとったわけではなかった。
「やることもないし、僕らみたいな年寄りが投げた方が、若い選手は緊張感を持って練習できると思うので……」
練習では自ら買って出て打撃投手を務めた。そして感嘆したのは、第2ラウンドの韓国戦に敗れ、決勝ラウンドへの進出が絶望的になったときだった(後に失点率の差で決勝ラウンドに進出)。
呆然とするチーム。ただ、さすがにレギュラー陣の中でも涙を流す選手はいなかったが、その中で和田だけが泣いていたのである。
「正直言って、僕は涙が出なかった。チームの中でああいうポジションにいながら泣けるベンちゃん(和田)は、凄いと思いました」
宮本がこう言っていたのを鮮烈に覚えている。
過酷な条件の中でも、チームのために献身的に尽くし、敗北に涙する控え選手がいた。
それが日本代表の強さでもあるわけだ。
スター選手たちが控えとして備えていることの意義。
「あのチームの強さは、『キミはサブプレーヤーだよ』って言える選手がいたことです」
こう語るのは第2回大会で侍ジャパンを世界一に導いた巨人の原辰徳監督だった。
「野手でいえばセカンドの片岡(易之内野手、西武)、宗くん(川崎宗則内野手、当時ソフトバンク)に外野の亀井(義行外野手、巨人)、キャッチャーの(阿部)慎之助(捕手、巨人)と石原(慶幸捕手、広島)。僕はこの5人のサブプレーヤーを忘れることができない」
原監督は振り返る。
そのどの選手も、自分のチームに戻ればバリバリの主力である。その“スター選手たち”が控えとして、いつ来るとも分からない出番のために短い時間で調整し、複数ポジションをこなすために普段は慣れない守備位置の練習もする。そうして縁の下の力持ちとして、チームのためにできる限りの準備をするわけである。