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“純国産”侍ジャパンをどう作る?
WBC3連覇達成へ向けた4つの課題。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/28 10:30
代表監督就任時に、目指すチームについて記者から問われると「点を取られない投手力のチームになれば」と語っていた山本監督。キューバとの連戦で、そのコンセプトは見事に実現されてはいたが……。
WBCって、大丈夫なの?
先週、日本人メジャーリーガーがひとりも参加しないことが明らかになり、不安の声は増幅している。
山本浩二監督の言葉を借りるなら「純国産」で臨むことが明らかになったが――それでいいじゃないか!
キューバとの親善試合が終わった侍ジャパン。初戦は7人の投手リレーで2対0の完封勝ち。第2戦は7回終了まで点が入らない緊迫した試合になったが、3対1で勝利を収めた。
なかなかスカッとした勝ち方はできなかったが、大隣憲司(ソフトバンク)、今村猛(広島)といった投手がしっかりとした仕事をした。野手ではパ・リーグの首位打者である角中勝也(ロッテ)も味のあるプレーを見せてくれた。
日本のWBCに対するスタンスは……優勝あるのみだ!
WBCも今回で3回目。各国の「温度」も見えてきた。基本的に4年に一度のこの国際大会は、日本でプレーしている選手たちが「オールジャパン」を編成し、日本は技術力、特に投手の制球力、野手の連係プレーなどを武器に常に優勝を狙っていくスタンスを取ればいいと思っている。
日本人メジャーリーガーが参加しないのは、選手個人の問題ではなく、アメリカ球界の温度の表れと見ればいい。仕方がないのだ。
そのうえで、11月30日の登録選手の〆切に向けての提言がある。勝つため、そして魅力づけのために必要なことを考えてみたのだ。
モチベーション維持に必要な「フォア・ザ・チーム」。
過去2大会、日本と韓国が真剣にWBCを戦ったことで大会の格がなんとか保たれたが、今回からは発想を変え、モチベーションの高い選手を使っていった方がチーム力は上がるはず、と考えている。もちろん、前回まではイチローをはじめとしたメジャーリーガーと一緒にプレーすることがモチベーションにつながった面があった。
今回はそれが失われただけに、まずは首脳陣とベテラン選手がどれだけチームとしての「戦う意識」を植えつけられるかがポイントだと思われる。
1996年のアトランタ・オリンピックのとき、28歳でチームの重鎮だった杉浦正則(当時日本生命)は、若手の選手たちにこんな話をしていた。
「頼むから、オリンピックという舞台では自分のためのプレーはしてくれるな」
これは後にソフトバンクでプレーすることになる松中信彦から直接聞いた話だ。彼にとって深く、刻まれた言葉だったのだ。
こうした「フォア・ザ・チーム」のために働ける選手が絶対に必要である。