プロ野球亭日乗BACK NUMBER
なぜ統一球でキューバと戦った?
WBC本番に不安を残した2連勝。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/19 11:40
第1戦で先発したソフトバンクの大隣憲司。2回を3奪三振の無失点で抑える完璧なピッチング。「自分らしい投球ができました。(WBC本番に)アピールできたと自分の中では思っています」とコメント。
メジャー球だとまったく変化球が使えない投手も。
実は今回の使用球は、日本で使っているミズノ社製の統一球と同じボールだったのだ。
キューバの国内リーグでも同社製のボールを使用しているためというのが理由だが、本大会で使用するローリングス製のメジャー球とは違うものだったのだ。
ご存知のようにメジャーの使用球は表面がツルツルで、日本のボールに比べるとかなり滑るのが特徴となる。縫い目の山も高く、握った感じもやや大きく感じるなど、微妙な使用感の違いもある。
そのため過去のWBCでも、このメジャー球への対応が、日本の投手たちにとっては、かなりやっかいなテーマだった。
例えば2009年に行われた第2回大会で代表候補入りしながら最終選考で落とされた西武・岸孝之投手がそうだった。
岸は宮崎で行われた合宿に招集されたが、メジャー球で本格的にピッチングをしてみると、勝負球のカーブの切れが極端に落ちることが発覚。その結果、メンバーから外れることになったのだった。
代表入りは果たしたが、当時日本ハムに所属していたダルビッシュ有投手(現テキサス・レンジャーズ)も、最後までメジャー球への対応がうまくいかずに苦労した。
そのため首脳陣が苦肉の策として、ボールの影響が少ない球種だけで勝負できるクローザー起用ということになったという裏事情もあった。
「オフの間に慣れてもらえれば十分に対応できる」
「日本もボールが統一球に変わったので、あのときに比べると影響は少ないと思う」
こう指摘するのは第2回大会に続き第3回大会でも、投手陣をサポートする与田剛投手コーチだった。
「前回はまだ日本は飛ぶボールを使っていてメジャー球との差が大きかった。ただ、今は統一球になって、飛距離だけでなく質的にもかなりメジャー球に近いものになっているので、オフの間に慣れてもらえれば十分に対応できる」
代表に選ばれた選手たちには、練習用にメジャー球が渡されて2月の合宿まで、そのボールで練習を行えるようにする。
ただ、あのダルビッシュも昨季は日本の統一球でプレーして結果を残しながら、今季のメジャー移籍当初は、ボールの違いに明らかに苦しみ、適応するまで時間を要している。
統一球の導入で多少は違和感がなくなり、適応できる投手が多くなっていることはあるかもしれないが、中には短時間ではどうしてもメジャー球に馴染めない投手がいるのもまぎれもない事実なのだ。