南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
“空飛ぶブルーサムライ”闘莉王は、
阿部と攻撃参加しカメルーンを倒す!
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2010/06/13 10:55
闘莉王と阿部の出会いは1998年。共に10代の時だった。
同い年の二人の出会いは、1998年。国体を目指す千葉県選抜チームの合宿だった。阿部は闘莉王について「自分らしさを出そうと必死にやっていた姿が強く印象に残っている」と言う。闘莉王は阿部に対し「キックがうまい。すごい才能のある選手」と感じていた。
その後も順調に成長し、互いに認め合う仲としてアテネ五輪に出場したものの、2006年ワールドカップでは共に代表に入れなかった。
そして、浦和時代の両者は微妙な間柄になっていく。『阿部にもっと個の良さを出してもらいたい闘莉王』と『闘莉王にもっとチーム戦術を順守してもらいたい阿部』が、水面下で激しくぶつかることもあったのだ。
が、それでも、練習グラウンドで激しく意見交換をするということはほとんどなかった。阿部が引く、という状況が多かったからだ。
カメルーン戦の最低ノルマ、勝ち点1が懸かる阿部のプレー。
だからこそ、代表の合宿地・ジョージで見られた二人のやり取りが頼もしかった。身振り手振りを交え、マークの受け渡しについて細かく、熱く話をしていた。とりわけ阿部が積極的にコミュニケーションを取っている姿は、練習全体の空気を引き締めていた。
今、阿部は言う。
「ただ守っているだけでは意味がない。ポジション的に毎回というわけにはいかないけど、行く行かないの判断をかぎ分けてやっていければいい」
カメルーンは両サイドに2枚ずつ置く4-3-3の形で攻めてくる。
日本は3ボランチの1枚がサイドに引っ張られても阿部ともう一人の2枚が必ず残り、最も危険なゾーンをケアすることができる。ここの守備、そしてボランチの攻撃参加が現在の岡田戦術のカギとなる。
互いに手の内が明かされていない初戦は、何が起こるか分からず、最も難しい試合であり、グループリーグの趨勢を占う重要な試合だ。
カメルーン戦での日本代表の最低ノルマは勝ち点1だろう。現実問題として多くの得点を望めない今、闘莉王、そして阿部の存在はますます重要な意味合いを持つことになりそうだ。