南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
エースの座を失った岡崎慎司の告白。
本田とのポジション争いはこれからだ!!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/06/14 10:50
6月10日、ジンバブエ戦後――。
岡崎慎司がミックスゾーンに入ってきた。 報道陣の問いに受け答える表情は、どことなくどんよりしている。自信に満ちていた声は、いつのまにか思春期の少女のようにナイーブになっていた。
つい先日までは、イケイケだった。日本代表のエースとしての自覚を持ち、「W杯? めっちゃ楽しみっすよ」と不敵な笑みを浮かべ、世界と戦うことを何よりも楽しみにしていた。しかし、イングランド戦、コートジボワール戦の2試合で大きく風向きが変わった。カメルーン戦の4日前、練習試合のジンバブエ戦では、ついにスタメン落ちの屈辱を味わったのである。
「ここにきて圭佑にとって変わられるのは、ほんと悔しいです」
岡崎は、唇を噛み締めて、そう言った。
スタメンを外される要因となったイングランド戦、コートジボワール戦、岡崎は1トップだった。いつものようにDFラインの裏を突こうと幾度となくトライしたが、ほとんど失敗に終わった。
「アジアでは、通っていたパスが通らなくなったり、今まではフリーで持てたところがそうじゃなくなったり、今までの試合とはまったく違う状況が出てきてしまった。世界レベルを実感させられましたね」
W杯直前で初めて分かった世界との本当の実力差。
岡崎の言葉通り、アジアでの戦いでは、常に日本が主導権を握っていた。中盤の選手はボールを持った瞬間、岡崎の動きを察し、DFの背後に絶妙のタイミングでボールを配給していた。だが、イングランドやコートジボワールは、そんな余裕を中盤の選手に一切与えなかった。日本の中盤は強烈なプレッシャーにさらされ、焦りながらボールを回すシーンが増えた。
「やっぱ、強い国とやると中盤のプレッシャーが半端じゃないんで、中盤の選手も僕を探しながらのプレーになるんです。それまではトラップした瞬間に僕を見てくれることが多かったんですけど、それがなくなってしまったんで、そこからいろんなタイミングがズレたりして……うまくいかなかったですね」
苦し紛れに中盤が出した裏へのボールは、相手センターバックにとっては非常に読みやすい。しかも、岡崎の1トップに対してイングランドもコートジボワールもセンターバックの2人が挟み込んで、対応していた。フィジカルに勝る屈強なセンターバックに挟まれたら、どんな選手でも自由は奪われる。しかも絶対的なスピードや技術がなく、タイミングで勝負する岡崎は同時スタートで競り合いを余儀なくされ、必然的に封じ込まれた。
「何も出来なかった。それが、今の自分の実力かなって思います。世界の強豪のDF陣に対応するには、個人のレベルを上げていくしかない。でも、もうW杯は始まってしまったわけだし、レベルを上げていくための時間はない。そのことがコートジボワール戦の後で分かったんです……」