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“空飛ぶブルーサムライ”闘莉王は、
阿部と攻撃参加しカメルーンを倒す!
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2010/06/13 10:55
ちょっと危うい。けれども閉塞感の漂う岡田ジャパンにおいて、何かをやってくれそうな選手の筆頭格は、やはり彼だろう。
田中マルクス闘莉王である。
コートジボワール戦でのドログバとの接触プレーをきっかけに、良くも悪くもいきなり世界が注目することになった『空飛ぶブルーサムライ』は、カメルーン戦前の最後の練習試合(6月10日、ジンバブエ戦)後に、聞いているこちらが思わず冷や冷やするようなコメントを連発していた。
「監督に言われた通りにやるばかりでは、自分たちの良さも出ない。それぞれがそれぞれの判断を持っているからこそ、サッカーは面白いんだし」
「(GKとDFの間に入れる、速く、低いクロスについて)世界がああやって点を取っているのは分かるけど、俺らがああやって取れるのかというと、取れていない。あればかり狙ってもバレるだけ。逆にマイナスのボールを出すなり何なりが必要だし、最後のアイデアの部分は他の国を真似しちゃいけないと思うんだけどね」
岡田ジャパンの良さであるとされる“チーム一丸モード”にあえて水を差すような言い方だった。
だが、これらの言葉には、すべて、闘莉王なりの意図がある。背番号4は普段から「仲良し集団であってはいけない。自分がヒール役になる」と、口にしているのだ。
「阿部ちゃんは攻撃力を持っている」と煽る闘莉王。
5月24日の韓国戦での完敗をきっかけに、戦術面だけでなく、精神的にもどんどん守備的になっているチームに対し、どこかで意識の転換を図らなければいけないと考えていたのではないか。だからこそ、ヒール的な言い方をしたのだろう。
実際のところ、ゴールの期待感が薄いシステムではあるが、選手間のコミュニケーションは、4年前に比べて良いように思える。
「アンカー? 阿部ちゃんは攻撃力を持っている。守備だけでは逆に良くない。阿部ちゃんがシュートを打つくらいの気持ちでやっていかないと」
こう言って闘莉王が阿部勇樹の良さを引き出そうとしているように、良いコミュニケーションの象徴が、闘莉王と阿部の関係だ。
ご存知のように、闘莉王と阿部は、2007年から昨年までの3年間にわたって、浦和レッズでチームメートだった。センターバックとして並んで守ったことも、闘莉王がセンター、阿部がボランチとして守ったこともある。