プレミアリーグの時間BACK NUMBER
パスサッカー志向強まるプレミア。
それでも薄まらない空中殺法の魅力。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/11/07 10:31
第6節サウサンプトン戦で吉田麻也と競り合う、エバートンのフェライニ。トップ下で起用されることの多い今季は、10節終了時点で5得点2アシストとチームの好スタートに大きく貢献している。
直線的な攻撃がチームにぴったりはまったミララス。
個人レベルでも、MVPを選べばエバートンのケビン・ミララスになる。
今季加入の新FWは、主にウィンガーとして起用されているが、ボールを持てば一気にタッチライン沿いを駆け上がる。カットインから果敢にシュートも狙うプレーが、チームの直線的な攻撃のインパクトを強めている。
ミララスが、怪我でハーフタイム中に退いていなければ、数字は更なるエバートン優位を示していただろう。そうでなくとも、後半のリバプールは、高さと強さでは対抗できない、フェライニとニキチャ・イェラビッチに集まるボールを何とかして奪おうと、本来の4-3-3から3-4-2-1に陣形を変更して、中盤深くでの守備を意識しなければならなかった。
「ロングの魅力」は今のリバプールでは生かせない。
更に皮肉な事実は、他ならぬジェラード本人が、「ロングの魅力」を持っていることだ。
今季のリバプールは、ブレンダン・ロジャーズ監督の下で、ポゼッション・サッカーへの道を歩み始めた。ジェラードは、3トップ下の右サイドや、4-2-3-1のトップ下をこなしているが、本来は、縦1本の速攻を可能にする、30m超級のロングボールや、中盤から敵陣を切り裂くキラーパスも持ち味とする。
昨年1月、前監督がアンディ・キャロルを獲得した際には、リバプール・ファンならずとも、シュートなみの勢いを持つジェラードのアーリークロスから、キャロル得意のヘディングが炸裂という得点シーンを想像したものだ。ところが、両者のコンビは、互いの故障もあって実現機会が乏しいまま、今夏の監督交代を以て自然消滅した。
ウェストハムにレンタル移籍したキャロルは、「手数をかけず前線にボールを運ぶ」ことを好む、サム・アラダイス監督の下、周囲を呼び込むポストプレーで、昇格チームの中位スタートに一役買っている。
ジェラードが引き合いに出したストークは、相変わらずの「質実剛健」路線。身長2メートルのピーター・クラウチにロングパスを届けるMF陣には、リバプールからチャーリー・アダムが加わった。
見た目の良いスタイルではないが、両軍にとっては、限りのある戦力を最大限に生かす有効なスタイルだ。