セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
インテル監督はセリエA最年少36歳。
若きストラマッチョーニの苦悩と現実。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/09/20 10:30
膝の故障で若くして引退を強いられ、トップチームでの選手経験は1シーズンのみだが、現役時代は長友佑都(手前)と同じく、DFだったストラマッチョーニ。
インテルでは無冠でシーズンを終えることは許されない。
今では誰もが一目置く名将ゼーマンが初めてトップチームをまかされたのは、今のストラマと同じ36歳のとき。ただし、託されたのはセリエAどころか無名の4部クラブだった。優に30年を超える指導歴の間には、サッカー界の酸いも甘いもかみ分けた。過去には、モラッティ会長直々にインテル監督就任を打診されたこともある。
インテルの監督になるということはどういうことか。
監督の上に立って現場を預かるブランカTD(テクニカル・ディレクター)は「今は我慢が必要な時期であることはわかっている。マンチーニ(監督/現マンチェスター・C)の1年目もそうだった」と現指揮官へのバックアップを確約している。だが「マンチーニは1年目でもコッパ・イタリアは獲ったがね」と、“何らかのタイトルは奪取せよ”と釘を刺している。ローマ戦後のモラッティ会長も「監督はこの敗戦をいい糧にしてほしい」と鷹揚な姿勢を示したが、彼はあの名将リッピやザッケローニでさえも有無を言わさず解任してきた人物でもある。
最年少指揮官に求められる、成功するための試行錯誤。
少々酷な言い方をすれば、彼は今年の2月までユースチームの指導経験しかない、無名指導者にすぎなかった。“ユース年代のCL”と呼ばれる大会で優勝したことで会長の目に留まり、異例の大抜擢を受けた。シンデレラ・ストーリーといえば聞こえはいいが、実績を残さないかぎりお伽話は長続きしない。
“外様”のストラマには、クラブ内に有力な人脈も後ろ盾もない。選手としての華やかなキャリアも、指導者としてのカリスマも持ち合わせていない。クラブの外には、モウリーニョと丁々発止のやり取りを繰り広げた現地メディアが手ぐすね引いて待ち構えている。
これらの内憂外患に対応しつつ、年俸総額100億円を超える選手達を腕一本で手懐け、数カ月後のタイトル獲得をにらんで毎日心血を注がなければならない。指揮官の味方といえるのは、FWリバヤやDFエムバイェらユース組ぐらいのもので、ストラマは実戦で彼らを起用しながらトライ&エラーをくり返す、リスキーな戦い方を選択している。彼が背負う重圧はどれほどだろうか。