欧州サムライ戦記BACK NUMBER
CL初戦で“ビッグクラブらしい”辛勝。
マンU香川が手にすべき「風格」とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/09/20 12:10
「トルコのシャビ」と呼ばれるセルチュク・イナン(ガラタサライ)とマッチアップする香川。2007-2008シーズン以来の欧州制覇をチームにもたらすことはできるか?
風格とは何か。
香川真司がマンチェスター・ユナイテッドの一員として初めて臨んだチャンピオンズリーグの戦いは、それを考えさせる試合となった。ユナイテッドは完璧な戦いで相手を圧倒したわけではないが、最後にはしっかりと勝利を手にしたからだ。
9月19日、ガラタサライをホームのオールド・トラッフォードに迎えたグループリーグ初戦で、今季のユナイテッドのヨーロッパでの戦いは幕を開けた。赤い悪魔は、序盤から前へ、前へと出て行く。ホームの大歓声に押されるように、選手たちは良い距離感でパスをつなぎ、相手陣内へと迫っていった。
前半7分には早くも歓喜の瞬間が訪れる。
キャリックが、下がり目の位置にいたファンペルシとのワンツーで前線に出てくると、香川へパスを出す。香川はトラップしたあと、迷うことなく右足のアウトサイドでエリア内にラストパスを送った。そこに走り込んでいたのが、キャリックだった。前に出てきたキーパーをかわし、倒れ込みながらゴールネットを揺らしたのだ。
「ボールをとってから、ゴールまで良いスピードで行けた。ああいう形は大事なのかなと思います」
早くもアシストをマークした香川はそう振り返る。
攻撃のテンポを操る役割も香川には求められている。
ところが、20分を過ぎたころからガラタサライはこのテンポに慣れ始め、前がかりになったユナイテッドの背後のスペースをついて、カウンターをしかけていく。すると、ユナイテッドの守備的なポジションの選手たちはカウンターを警戒して、序盤のような効果的な押上げができなくなっていった。
「前半の中盤からは良いパス回しが出来なかった。そうなったときにどうしていくのかは考えないといけない」と香川も反省の弁を口にする。
選手間の距離が広がり、攻撃からスムーズさが失われていった。
「もっと、僕自身がボールをキープして落ち着かせる必要がある。ゆっくりと攻撃を進める時間帯が必要なのかなと思います」
この試合では4-2-3-1というよりは、ファンペルシと香川が前線で近い位置をとる4-4-2に近い形だったが、攻撃のテンポを操る役割も香川には求められているということだろう。このあたりは香川にとっての課題となる。