プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ディマッテオの下、ランパードも変身!
新生チェルシーを支える「学習能力」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2012/09/13 10:30
9月に入り、ボランチを務めていたラウル・メイレレスがトルコのフェネルバフチェに移籍。ランパードの役割はより重要になった。
12年目となるランパードは、残留を望んでいるが……。
自らのゴール以上にこだわる「スタメン」の可能性を最大限に高めるべく、変身の必要性を悟ったのだ。レディングに1対1とされた際、人もスペースもケアしきれなかったように、守備面でのポジショニングには改善の余地がある。タックルのタイミングにも注意が必要だ。しかし、その点は、「もっとプレスに行ったり、守備の仕事を全うしなければ」と、実戦から学ぶ意識も十分だ。
今季末で契約が切れるチェルシー12年目の34歳は、残留を望んでいる。ミケルの他には、20歳のオリオル・ロメウしか本職がいないボランチとしても力になれれば、契約延長の可能性も増す。また、ゴール前に顔を出す頻度が減る分、機を見ての攻め上がりが相手DFの意表を突くと、プラスに解釈することもできる。ピッチにいれば、従来通りPKも任される。2年間の契約延長を取り付けることができれば、昨季の段階であと16点に迫り、「達成できたら最高の達成感」と本人が言う、クラブ歴代得点王の座はほぼ確実だ。
前監督を反面教師に、コミュニケーションに留意し主力の人心を掌握。
ランパードが腹を括った背景には、指揮官のマン・マネージメントもある。
今季から正監督となったロベルト・ディマッテオは、プレミアでの監督歴1年未満の42歳だが、やはり着実に学んでいる。助監督当時のディマッテオには、「選手との距離の遠さは監督以上」という声が内部から漏れていたが、暫定監督となるや否や、主力の人心掌握に失敗した前監督を反面教師として、コミュニケーションに留意した。ランパードは、チームがスタイル変更と若返りの過渡期にあっても、貴重な経験値を持つ戦力と評価されていると実感し、モチベーションを上げた古株のひとりだ。
選手操縦法の成果が最も顕著なのは、フェルナンド・トーレスだろう。
監督交代以降、「監督の信頼を感じる」という発言が度々聞かれる。指揮官としてのディマッテオは、昨季から、トーレスに途中交代を命じれば、必ず二言、三言、声を掛けてきた。CL決勝の帰路では、お祭り騒ぎの機内で、ベンチスタートを命じたCFと差しで話をし、自身の続投が未定だったにもかかわらず、「お前はクラブの未来だ」と告げたという。