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北京とロンドンでは何が違ったのか!?
不調の内村が身を委ねた“直感”。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2012/08/04 12:50

北京とロンドンでは何が違ったのか!?不調の内村が身を委ねた“直感”。<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

技の難度を下げ、確実性の高い演技で個人総合金メダルを獲得した内村。団体総合決勝で骨折し、個人総合決勝を欠場した山室光史のためにも、内村は初めて勝負を優先させた。

「自分が引っ張る」と言い続けてきた団体。

 何がそうさせたか。

 ひとつには、今大会に入って、内村が納得のいく演技ができていなかったことがある。

 団体予選では、鉄棒でまさかの落下をするなど、らしくない演技となった。団体決勝でも、今度は最後の鞍馬でミスが出た。内村の力を考えれば、あり得ない失敗をした。

 内村は、団体決勝のあと、コンディションなどの問題ではないと言った。なぜ本来の演技ができないのかわからないとも口にした。

 ひとつ考えられるのは、メンタル面だ。

 内村はロンドンを前に、「団体で金メダルを獲りたい」と言い続けてきた。そのためには、「自分が引っ張る」とも言ってきた。

 リーダーシップの自覚は、第一人者として自然なことだし、責任感の表れでもある。

 しかしそれは、重圧となっていたのではないだろうか。それが演技にも影響が出たのではないか。

 内村は、ロンドンが初めてのオリンピックであるわけではない。北京五輪にも出場している(団体と個人総合で銀メダル、ゆかで5位)。しかし、若手のホープとして、思い切って臨めた北京五輪と今回とでは、立ち位置が異なる。

 いずれにせよ、納得のいく演技ができないまま過ぎていき、迎えた個人総合で演技の内容を変えた。

演技を落としても勝てるだけの地力を築いてきた。

 むろん、葛藤はあった。

「正直迷ったんですけれど。なんか、技を抜いて確実にやってもな、というところもあったんですけれど、抜いてもいいのかなという直感がすっと入ってきたので、それに身を委ねました」

 なによりも、オリンピックは特別な大会だ。

 だから勝ちにこだわり、見事、結果を手にした。

 ひとつ言えるのは、技を多少落としても勝てるのは、それだけの地力を築いてきたからである。内村がどれだけ突出した存在なのかをあらためて示してもいる。

 金メダルを手にした内村は、あらためてこう語った。

「世界選手権3連覇しているんですけれど、やっぱり違いますね。夢のようというか、表彰台で日の丸が上がっているのを見ても、本当なのかな、いや最高だなぁ(笑)、みたいな感じで見ていました」

 オリンピックという舞台だからこその重圧、オリンピックという舞台だからこその喜び。

 対極の点からオリンピックをあらためて体感した内村の姿は、オリンピックの重みをあらためて感じさせるものでもあった。

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