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スウェーデン戦はデジャヴになる!?
なでしこが勝つための2つの注意点。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNoriko Hayakusa/JMPA
posted2012/07/28 11:35
アグレッシブな走りと豊富な運動量でスウェーデンをキリキリ舞いさせることができるか? 川澄、大野、安藤らには大いに期待したいところ。
ロンドン五輪開幕直前に某公共放送でオンエアされた、なでしこジャパンに関するドキュメンタリーを見て驚いた。
6月のスウェーデン-日本戦の映像を流しながら、ナレーターが
「スウェーデンは得意のロングボールで攻めてきます」
と言うのだ。なるほど、画面にはスウェーデンがロングボールを使って攻めてきたシーンが映し出されている。
けれども、試合中わずかしかなかった場面のうちの1回を抜き出して、さもずっと同じような攻撃が繰り返されたかのように構成するのは、ミスリードってやつじゃないのだろうか?
第一、ロングボールを使うのはスウェーデンの“得意”な攻撃法ではない。
グループリーグ2戦目で日本が対戦するスウェーデンのアタックの特徴は、ふたつある。
中盤の両翼がパス交換から縦へ突破したり、FWのシェリンが左右のタッチライン沿いに流れてボールを受け、そこから折り返したりドリブルで中に切れ込んだりしているという、サイドからの崩しがまずひとつ。
そしてもうひとつは、シェリンの飛び出しだ。彼女は179センチの長身でありながら快足で、その上繊細なボールタッチを持っている。中盤からのスルーパスで最終ラインの裏を取ると、一気にGKとの1対1へ持っていくのである。
以上二つの攻撃パターンのいずれも、もっぱら使われるのは短・中距離のパス。スウェーデンには大柄で筋力のある選手がそろっているわりに、ロングボールでの展開やゴール前の空中戦をさほど挑んでこないのである。
守るなでしこの側としては、これは好都合だ。
スウェーデンがロングボールや空中戦を多用してきても……。
サイド攻撃と言ってもアメリカのそれのようにスピードでぶっちぎるわけではないから、連動しての守りにはめやすい。また、シェリンがサイドへ流れるパターンでも、ボールを持てば一度足が止まるわけだから、日本の守備陣が二人がかりで応対しに行くだけの時間はある。
厄介なのはシェリンの裏への抜け出しの方だが、スウェーデンの中盤はボールを持ってから考えるタイプが多いので、これもプレスの連動さえ怠らなければ、シェリンへのパスを絶つことができる。そして万が一裏を取られても、日本のゴールマウスには前への反応が早く、至近距離からのシュートストップに長けたGK福元が立ちはだかっているのだ。
あるいは仮に、日本戦限定でスウェーデンがロングボールや空中戦を多用してきたとしても、それは彼女たちにとって慣れた戦い方ではない。ピンポイントのフィードは数えるほどだろうし、かえって自分たちのリズムを崩してしまう確率の方が高いのではないか。