スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
スペインは、若くナイーヴだった……。
金メダル候補と言われることの難しさ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2012/07/27 12:25
何度もドリブル突破を図る永井に対し、たまらずイニゴ・マルティネスがファウルをしてレッドカード。先制された動揺からか、スペインはこのシーン以外にも何度もラフプレーやミスを繰り返した。
日本にとって、サッカーのオリンピックとして記憶されるのではないか――。そんな予感もしてきた。
25日はW杯女王のなでしこが初戦で快勝し、それに続くかのように26日にはU-23がスペインを破った。オリンピック予選を兼ねたU-21欧州選手権を制したスペイン相手に堂々たる勝利である。
スペインのU-23はいかにもナイーヴだった。メンバーにマンチェスター・ユナイテッド、バルセロナといった名門クラブでプレーする選手がいるにもかかわらず、日本に先制されると自制心を失った。W杯王者のプライドが若者たちにとっては、負の連鎖への導火線となる。結果、日本には番狂わせを演出するだけの材料がそろっていた。
スペインとはいえど、若かった。
その日本にしても、ナイーヴだった。
相手は10人、後半に訪れた再三の決定的なチャンスをモノにすることができなかった。スペイン相手に「2-0」。まるで、そうしてしまってはお仕置きを食らってしまうのではないか、そう思えるほどに日本はゴールネットを揺らすことができなかった。大きな勝利を前にしたナイーヴさ。
日本代表もまた、若かったのだ。
続くは29日のモロッコ戦。勝ったことでナイーヴにならなければ、流れはいい。
イギリス代表監督が、まるで出来の悪い息子を持つ父親のよう。
ライアン・ギグスをオーバー・エイジ枠で招聘した地元イギリスは、セネガル相手に1対1で引き分けた。
1点を先制しながら、追加点が取れないことが不安要素となり、監督のスチュアート・ピアースはその感情をうまく隠し通すことができなかった。
なお悪いことに、同点とされてからは不安の塊へと変身してしまった。ピッチで戦っている選手よりも、明らかに不安げだった。誰かに似ている――。そう思ったら、彼の姿が出来の悪い息子たちを持った父親に似ているようだと思ってしまった。
引き分けてしまった。でも、負けてないからいいじゃないか。第三者からはそう見える。しかし、地元開催のプレッシャーは人間をナーヴァス、ナイーヴにしてしまう。
振り返れば、バンクーバー・オリンピックが開かれるまで、カナダは地元開催のオリンピックで金メダルを取ったことがなかった。ウィンター・スポーツをこよなく愛するカナダ国民は、長いこと苦しみ、ナイーヴだった。バンクーバーでその呪縛から解き放たれたけれど。
サッカーのチーム・グレイト・ブリテン、次のUAE戦が注目である。負けてよりナイーヴになるのか、かえってたくましくなるのか。日本と合わせて注目したい。