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“引退の危機”から一転ロンドンへ。
バドミントン潮田を突き動かすもの。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAP/AFLO

posted2012/07/02 10:30

“引退の危機”から一転ロンドンへ。バドミントン潮田を突き動かすもの。<Number Web> photograph by AP/AFLO

ロンドン五輪代表にミックスダブルスで出場する潮田玲子(手前)、池田信太郎(奥)ペア。潮田は、代表発表後に行われた記者会見で「年齢的にも五輪はロンドンが最後だと思う。集大成として臨む」と意気込みを語っている。

未経験がゆえの苦労をフロンティア精神で乗り切る。

 日本ではミックスダブルスを専門にプレーする選手は、トップレベルには皆無だった。大会に派遣されるのは、女子ダブルス、男子ダブルスと掛け持ちしている選手たちだ。

 だから、国内で練習しようにも相手がみつからずに男子ダブルスのペアとやるのが中心にならざるを得なかった。そのため、女子ダブルスとは違い男女で組んでいるミックスダブルスならではの駆け引き――基本的に女子が前衛に位置するようにするポジション取りなどに慣れるのも容易なことではなかった。女子ダブルスのときとは違った苦労を強いられた。

 それでもめげることなく地道に大会への参戦を重ね、その都度課題をみつけては克服していった粘り強さも、「自分はチャレンジしているんだ!」という実感があればこそだった。

 以前、オリンピックに複数回出場したことのある選手が「気持ちのあるなしで、練習への意欲もかわるし、最後まで練習をやりきるとか、細かなところへのこだわりもぜんぜん違う。体力とか技術よりも、やっぱり気持ちがいちばん大きいです」と言っていたのを思い出す。潮田の歩みもまた、それを証明しているのかもしれない。

ロンドン五輪は挑戦者として歩んできた4年間の集大成。

 今年5月に発表された世界ランキングにより、ロンドン五輪の出場権を獲得した潮田は、6月25日、2週間にわたる海外遠征を終えて、ペアを組む池田とともに帰国した。

 遠征中、2つの国際大会に出場し、シンガポール・オープンでは準優勝した。

 この大会は年間12大会が実施される「スーパーシリーズ」のひとつ。オリンピック、世界選手権に次ぐグレードに位置づけられているこのシリーズの大会で、池田とのペア結成以来、最高の成績をあげての帰国である。

 オリンピックを前に手ごたえをつかんだ潮田は、ロンドン五輪が「集大成の場」であるという。

 チャレンジャーとして歩んできた4年間の締めくくりである大会で、潮田が失うものはないはずだ。ときに重圧にも苦しんだ北京五輪とは異なる姿を見せてくれるだろう。

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