日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
思い出したいドイツW杯直前の記憶。
本番までに日本代表にできることは?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2010/05/15 08:00
現地で発熱していたドイツ大会では体調管理に失敗して中村俊輔。今も左足の調子は万全ではない。遠藤の疲労や稲本の左足の肉離れなど不安要素も多い
フィジカルだけでなくメンタルの調整も非常に重要。
4年前を振り返ってみるとドイツには善戦して2-2で引き分けたものの、その後のマルタ戦は一転して試合内容に乏しく、ドイツ戦の輝きがまるで嘘のように消えていた。試合後のジーコは「いい形をつくっても持続できない。きょうのような気持ちでは本大会に入っていけない」とフィジカルコンディションだけでなく、メンタルの低下を危ぶんだのだ。しかし結局は1週間後のオーストラリア戦までにフィジカル、メンタルの両面で劇的な回復はなく、悪夢の逆転負けが待ち受けていたのは周知の事実である。
岡田監督が23人枠のなかに今季Jリーグで出場していない川口能活を土壇場で入れたのも、ドイツW杯を含めて様々な経験を持っているからに違いない。ドイツW杯では'02年のメンバー23人中約半分の11人が入っていたが、今回のメンバーでドイツW杯を経験しているのは8人。彼らが過去の失敗を教訓にして、他のメンバーに経験を伝えていく役割を担うことになる。
中村俊輔には大会直前の3連戦のイメージができている。
ドイツW杯を経験した一人の中村俊輔は、W杯メンバー選出の会見で「いかに戦う集団になることができるか」をカギに挙げている。
ドイツでの教訓を踏まえて韓国、イングランド、コートジボワールとの3連戦をどう戦い、大会までの準備期間をどう過ごしていくのか、そのイメージもある程度できている。
「前回のW杯はドイツ戦の後に弱い相手が来て、チームの気持ちがちょっと(高まらなかった)というのはあったのかもしれない。今回、どの相手にしても気持ちを抜いていい試合なんてない。だけど、特に韓国戦は勝つことが大事。五分五分のボールを奪うなど死に物狂いで勝つ姿勢を出すことができれば、次につながってくると思う。ファンにも分かってもらえるような激しい試合をすることがベスト。そのあとの試合で、速攻を食らったときにどうするかとか、セットプレーのこととか対策を考えていけばいいと思う。それが今自分の持っているイメージ」
韓国戦が大会直前にあることで「戦う集団」が完成する。
当初、W杯直前の日韓戦は激しい消耗戦になることが予想され、ドイツ戦で加地亮や高原直泰がケガをしたように、激戦の代償を危惧する声が関係者のなかでも少なくなかった。だが、セルビア戦で大敗を喫した以上、停滞している雰囲気を変える意味でも、中村の言うように今は勝利こそがチームにとって何よりの良薬だと考えたい。その相手がライバルの韓国なら、薬の効き目はより十分なはずである。23人全員がチームのために戦う気持ちを強く持って韓国と互角以上に張り合うことができれば、中村の言う「戦う集団」に近づくことができるというものだ。