野球善哉BACK NUMBER
交流戦制した巨人の独走は許さない!
中日の試合前練習に見た試行錯誤。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/06/20 13:10
2年連続交流戦勝ち越しを決めた中日・高木守道監督。「打ててないんでね。勝ち越しは十分ですよ。余裕で勝ってる試合なんてひとつもないんだから」と安堵のコメントを残している。
粘り強くて勝負強い……昨季を彷彿とさせる中日。
1戦目では1回裏に先発の山内壮馬が2失点するも、粘り強く投げ抜くと、終盤8回に4番・ブランコの豪快な一発で同点。小刻みに投手をつないで延長に持ち込み、延長11回、荒木雅博の適時打で勝利をもぎ取った。
2戦目は、エース・吉見が復帰登板。
1回裏に、平田のまずい守備もあって1点を先制されたが、以後は抜群の制球力を見せて、8回を3安打1失点に抑える好投。エースの存在感を見せつけた。試合も、5回に同点に追いつくと、8回表、高卒新人・高橋周平がプロ初本塁打を記録。これが決勝打となり、最後は守護神・岩瀬仁紀が締めた。
まさに、昨年の中日を彷彿とさせる試合だった。
チーム状態は自然と上がってくるものではない。特に攻撃面に関していうと、不振の時期、個別にどのような働きかけをしてきたかが重要である。
そういう意味で、もっとも卑近な例が、今の巨人だろう。
開幕から絶不調と言っていい最悪のスタートをきった巨人は、チームがどん底にあった4月、5月をどう過ごしてきたのか。なぜ現在のような快進撃へとつながったのか。それが、ずっと気になっていた。
不振の時期にあった、上昇に転じるための練習の工夫。
巨人の復活を強く意識したのは、開幕してから1カ月後、巨人の試合前練習を見た時のことだ。
開幕直後の巨人は、4番の村田修一を除き、ほとんどの選手がコーチの投げるボールをティー打ちしているだけで、惰性でこなしているように見えた。実際、どの試合でも型通りの試合前練習が繰り返されていたように記憶している。
それが開幕から1カ月を過ぎると、明確な変化が見られた。コーチが投げるティーを打つ選手もいれば、スタンドティーを打つ選手がいる、フリーバッティングでも様々な注文をピッチャーに出してから打つ……それぞれの選手に「工夫」が出てきたのだ。
打撃コーチの村田真一がこんな話をしていた。
「我々は1年間で考えて選手を見ている。その都度、何が起こるか分からない中で、そのときの結果だけではなくて、選手にあった練習をやるように言っている。たとえば、身体が前に突っ込んでいる選手に関しては、スタンドティーをやったらどうか、とかね。(スタンドティーは)自分のスイングの確認ができるからね。
基本的にフリーバッティングで選手がバッティングゲージに入ってからは口を出さないようにしているんだけど、ティーの時には指摘したりするようにしている。(坂本)勇人がスタンドティーをやっているのは、自分で何かを感じ取っている部分があるからだと思うよ」