フットボール“新語録”BACK NUMBER
“天才”柿谷曜一朗を蘇らせる、
C大阪・ソアレス監督の非凡な目。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byToshiya Kondo
posted2012/06/19 10:31
今年、レンタル先の徳島からセレッソに復帰した柿谷曜一朗。選手層の厚さに阻まれ、まだ途中交代での出場が多いが、時おり天才の片鱗を覗かせるプレーを披露する。
柿谷の“天才”とは、どの部分を指しているのか?
あくまで個人的な意見だが、柿谷は“パスの天才”ではないという印象を抱いている。天才的なパスを出せる選手というのは、人とは違うものが見えていて、特殊な目を持っている――と個人的に定義しているからだ。そういう意味で小野伸二や遠藤保仁はパスの分野における天才だが、柿谷は違うと。
ならば柿谷はどんな分野で突出した才能を持っているのか?
顔を上げたドリブル、ではないだろうか。
止めて蹴るという基本技術の正確さがずば抜けており、さらにドリブル時に背筋がピンと立っているので、相手の動きをしっかりと把握して、プレーを変更することができる。体の強さこそ違えど、まるでクリスティアーノ・ロナウドのようだ。
姿勢の良さは、得点力にも大きく関係する。
下を向いてしまうドリブラーの場合、GKの位置を確認できないのでシュートが力任せになってしまう。一方、顔を上げられるドリブラーは、GKが届かないところをきちんと認識できる。もちろん柿谷の場合、そこにボールを送り込む技術もある。
ボールを引き出す動きをせず、試合から消えている時間が長い。
柿谷はバックステップやサイドステップなどで相手の背後にまわるといった工夫が少なく、ボールを引き出す動きがあまりうまくないため、試合から消えている時間が長い。だからMFとして起用されると、どうしても“何もしてない”という印象を与えてしまう。
しかし、ストライカーという役割なら、いくら試合で消えていても、ゴールさえ決めればすべて帳消しになるのだ。
まさにこの川崎戦では、ほとんどの時間消えていたにもかかわらず、一瞬の仕事でヒーローになるという特殊能力を存分に発揮した。