フットボール“新語録”BACK NUMBER
“天才”柿谷曜一朗を蘇らせる、
C大阪・ソアレス監督の非凡な目。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byToshiya Kondo
posted2012/06/19 10:31
今年、レンタル先の徳島からセレッソに復帰した柿谷曜一朗。選手層の厚さに阻まれ、まだ途中交代での出場が多いが、時おり天才の片鱗を覗かせるプレーを披露する。
「日本を見渡しても、柿谷ほどの技術を持っている選手はなかなかいないと思う」
セルジオ・ソアレス監督(セレッソ大阪)
6月6日のナビスコカップ第5節、セレッソ大阪対川崎フロンターレ(3対2)を取材に行くと、おもしろい采配に出会った。
セレッソ大阪のセルジオ・ソアレス監督は、0対1とリードされて迎えたハーフタイム、大胆な交代を実行する。ボランチの扇原貴宏を外し、左MFとして先発した丸橋祐介をそのポジションに移したのだ。
丸橋といえば、プロとしては左サイドバックで頭角を現した選手で、多くの人が“左サイドのスペシャリスト”という印象を抱いているだろう。にもかかわらず、ソアレス監督は突然、試合中に丸橋をボランチにまわしたのだ。あえて日本代表でたとえるなら、(利き足は違うが)長友佑都を流れに応じてボランチに置くようなものだろうか。
また、扇原はロンドン五輪代表のボランチのレギュラーなのだ。普通の感覚であれば、実績を評価して、それだけの格の選手をハーフタイムで下げないはずだ。
だが、ソアレス監督には、そういう固定観念は一切ないらしい。
柿谷を2トップのひとりとして使うという“奇策”!?
試合後、丸橋をボランチに移した理由を、ソアレス監督はこう語った。
「前半はボールまわしが遅かったために、相手に戻る時間を与えてしまっていた。なかなかタカ(扇原)のところから前にパスを出せていなかった。そこでマル(丸橋)の方がスムーズに前にボールが行くと考えて、彼をボランチに移した。扇原が前半にイエローカードを受けたことも、理由のひとつ」
ソアレス監督は丸橋に「どんどん素早く前にボールを入れて行け」と指示したという。この起用が見事に当たり、セレッソは後半、ゲームの主導権を握って逆転に成功した。
ただしこの日、ソアレス監督の“目”の非凡さを示す起用は、これだけではなかった。
これまでは2列目で起用されることが多かった柿谷曜一朗を、2トップのひとりとして起用したのだ。