日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
オマーンを終始圧倒した日本代表。
快勝劇の裏にあった“3つの意識”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/04 12:35
「(W杯最終予選の)初戦の硬さはわりとありました」と語った本田圭佑。だが、先制点だけでなく、攻守にわたって起点となるプレーを見せ、勝利に貢献した。
月の明かりがまばゆく照らす埼玉スタジアムのスタンドはお祭り騒ぎが続いた。サポーターもこれほど安心して見ていられるとは思わなかったのではあるまいか。緊張からかスタートこそ硬さが目立ったものの、終わってみれば3-0という快勝劇。オマーンに対してはわずか1本のシュートしか許さなかった。
過去、アジア最終予選の初戦には苦しんできた。
ドイツW杯のときも南アフリカW杯のときも相手にゴールを与えて1点差勝利。そのことを考えれば相手のレベルうんぬんではなく、“簡単に勝ちきること”がいかに難しいかが分かる。しかしザックジャパンはオマーンのレベルがどうあれ、難しい試合を簡単に勝ち切ってみせたわけである。
「初戦を取ることの大切さを心に強く持ちながら選手たちは戦ってくれた。私が描いていたとおりのゲーム内容にしてくれたと思う。ピッチに立ったすべての選手を褒めてあげたい。チーム全員で攻撃をして、チーム全員で守備をしたと思っている」
W杯最終予選は結果がすべて。アルベルト・ザッケローニは試合後の会見で満足げに、選手たちをねぎらった。
「本田はいつも私の指示を忠実に聞いてくれる」(ザッケローニ)
6月3日、ブラジルW杯アジア最終予選第1戦オマーン戦。
指揮官の言うとおり、全員の意識の高さがこの勝利を呼んだ。全員が球際を激しく行き、体をぶつけた。全員が汗をかこうとした。全員がリスクマネジメントを常に頭に置きつつ、スピーディーにボールを動かしてゴールを目指そうとした。そのなかでスカウティングに忠実にオマーンを攻略した。つまり全員が冷静であった。
日本が奪った3ゴールはいずれも、オマーン攻略のために課せられたミッションを実行に移したものだった。
まず1つ目は「サイド攻略の意識」。先制点の崩しは見事というほかない。
前半11分、今野泰幸がルーズボールを拾って、クサビに入った前田遼一に当てる。香川真司とのワンツーから左サイドの裏に出た長友佑都のクロスに、ファーサイドで待ち受けていた本田圭佑が左足でゴール右隅に蹴り込んだ。ニアに入って相手DF2枚を引きつけた岡崎慎司の貢献も大きい。すべてダイレクトでパスを動かし、そのパススピードも速かった。選手たちのイメージがピッタリと合っていた。
「試合前、本田には『クロスが上がったらあのタイミングで、できればファーにいてほしい』と伝えていた。結果そのとおりの形になった。本田はいつも私の指示を忠実に聞いてくれる」(ザッケローニ)
「監督からも『相手の右サイドのところを突いていけ』と昨日も言われたし、試合前にも言われた。相手の守備が整う前に崩しきれて、理想の形だったと思う」(長友)