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ペトロビッチ、ゴトビ、西野らの激突!!
個性派監督の“スタイル”を読み解く。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/05/26 08:03
昨季は残留争いをしていた浦和を率い、上位につけるミハイロ・ペトロビッチ監督。広島の躍進も彼の遺した物の大きさを物語っている。
両監督のプライドと“スタイル”のぶつかり合い。
しかし浦和にとって誤算だったのは、清水が“ガス欠”を起こさなかったことだ。
攻撃面では3トップの両翼に位置する高木俊幸と大前元紀の突破力、守備面では最前線から激しいプレスを仕掛ける清水のサッカーは、アグレッシブに相手ゴールに迫る半面、後半に“ガス欠”を起こして失速する試合が少なくない。
ところがこの日、清水は高い位置からプレスを仕掛ける姿勢を崩さなかった。両サイドを封じられて攻め手を欠いたものの、打開策を模索しながら果敢なチャレンジを続け、ボールを失うとすぐに頭を切り替えてプレスに没頭した。
その結果、浦和はボールを奪ってからの1本目のパスに精度を欠いた。ペトロビッチが言う。
「抱えている問題の1つにポゼッションがある。試合を通して、後ろからしっかりつないで攻撃を組み立てなければならない。もっと質の高いボールを後ろから入れることが重要だ」
浦和は清水の“スタイル”に苦しみ、清水は浦和の“スタイル”に苦しんだ。しかし、セットプレーでしかゴールが生まれない重々しい展開の中で、両指揮官のイメージする理想がはっきりと見えるゲームでもあった。だからこそ、攻撃姿勢を貫きながら白星を奪えなかったゴトビ監督は「浦和のようなプレーをして勝つよりも」と憎まれ口を叩き、攻撃ありきの守備を“守備的”と断定されたペトロビッチは「負けは負け」と応戦したのだろう。
文字ヅラだけを見るとまるで中学生の口ゲンカのようでもあるが、それはお互いのサッカーに対するプライドの表れでもあった。
監督の存在感が際立つチームはなぜ強いのか?
両指揮官の舌戦に象徴されるように、特に近年のサッカー界では、選手を差し置いて監督がスポットライトを浴びることが少なくない。
世界を見渡せば、その傾向はより顕著である。契約延長のサインを交わしたレアル・マドリーが「世界一の監督」ともてはやすジョゼ・モウリーニョしかり、万雷の拍手に包まれて一時的にピッチを去るバルセロナのジョゼップ・グアルディオラもしかり。マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソンやアーセナルのアーセン・ベンゲルは言わずもがな、今季はユベントスをリーグ制覇に導いたアントニオ・コンテや、アスレティック・ビルバオを劇的に進化させたマルセロ・ビエルサがメディアを賑わせた。
つまり、監督が選手と同等の、あるいはそれ以上のスポットライトを浴びるチームは強い。強いと言い切ってしまうと語弊があるが、それぞれに魅力的なサッカーをしていると感じるのはおそらく気のせいではない。それはなぜか。