プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンチェスター両雄の歓喜と屈辱。
プレミアの新たな2強時代、始まる!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/05/25 10:31
10万人を集めた44年ぶりの優勝パレード。マンチーニはバスの上からファンにカメラを向け、コンパニがトロフィーを掲げるたびに喝采があがった。
プレミア連覇に向けての障害は、FFP規則と巨額の赤字。
その上、マンチーニは、今季の大仕事を終えた直後でありながら、「来季に向けて補強しなければ」と付け加えることも忘れていない。合計5000万ポンド(約65億円)で、ファンペルシとエデン・アザール(リール)の引き抜きが既に噂されている。UEFAのFFP規則がなければ、マンCの長期政権が確実視されているところだ。
2014-15シーズンのUEFA競技会に出場するには、今後3年間の経営赤字を、年次4500万ユーロ(約45億円)以下に抑える必要があるが、アブダビ王族の資金に頼るマンCが、昨年に計上した赤字はその6倍に上る。今冬に売れなかったテベスの他、トップクラスの年俸を稼ぐバックアッパーの売却は難しい。プレミア王者の肩書きが副収入増加につながるとしても、常人の感覚では、短期間でのFFP対応には、ロスタイム中の2得点による優勝なみの「奇跡」が必要だ。
十八番の「奇跡」を奪われたマンUは来季の逆襲を誓う。
さて、優勝争いに敗れたマンU陣営は、隣人の「奇跡」による敗北に、かつてないほど傷ついている。アレックス・ファーガソン監督が、「逆転勝利は我々の十八番」と自負してきたように、「奇跡」はマンUの専売特許だった。スーパーサブ2名のゴールで勝利を奪った、'99年のCL決勝が好例だ。
土壇場の形勢逆転は、集団の意思と運の強さ以外に、選手層の厚さをも示す。
今季のマンCでは、途中出場の選手が、リーグ最高の合計15ゴール9アシストを記録した。マンUは、半数の7ゴール5アシストに止まっている。表面的には得失点差(8)の惜敗だが、実質的には明らかな総合力の差が存在していたと言える。
勝ち点89ポイントは、過去2シーズンであれば優勝できていた数字だ。CBのネマニャ・ビディッチと、ボランチのダレン・フレッチャーの長期欠場をはじめ、主力の故障者がマンCよりも多かった中で、最後まで優勝を争った点は流石とも言える。新GKのダビド・デヘア、最終ラインのフィル・ジョーンズ、クリス・スモーリング、ラファエル・ダ・シウバ、中盤のトム・クレバリー、そして前線のダニー・ウェルベックといった20歳そこそこのレギュラー陣は、今季の悔しさを成長の肥しに変えるだろう。
だが、戦力が劣っていたが故に、序盤戦からマンCを追う立場となり、終盤戦では一時的に逆転したものの、最大8ポイント差をつけた首位を維持することができなかった。