プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンチェスター両雄の歓喜と屈辱。
プレミアの新たな2強時代、始まる!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/05/25 10:31
10万人を集めた44年ぶりの優勝パレード。マンチーニはバスの上からファンにカメラを向け、コンパニがトロフィーを掲げるたびに喝采があがった。
『Definitely Maybe』──マンチェスター・シティの芸能人サポーターとして有名な、ギャラガー兄弟を中心とするオアシスが、18年前に発表したデビューアルバムのタイトルである。
去る5月13日、44年ぶりのリーグ優勝を見届けようと、今季最終節に集結したマンCサポーターの心境も、「間違いない。多分」だったに違いない。
ホームのエティハド・スタジアムでは、今季のプレミアリーグで負け知らず。相手は格下のQPR。順当に勝ちさえすれば、得失点差で2位のマンチェスター・ユナイテッドを抑えての優勝が決まる。だが、前回優勝の1968年当時を知る年配のファンは、やはり勝てば優勝という最終節でシーソーゲームに気を揉んだ記憶が蘇ってきたことだろう。前回も僅差で優勝を争った地元の宿敵は、最終節で、奇しくも今季と同じサンダーランドと対戦していた。
若い世代にも、'98年の悪夢がある。マンCは最終節での自殺点で3部降格が決まり、代わりに降格を免れたのが、今季も瀬戸際のQPRだった。加えて、今回は直接対戦する因縁の相手に、監督のマーク・ヒューズに、キャプテンのジョーイ・バートンと、マンCを追われて心に一物を持つ要人までいた。長らく日陰の存在に甘んじてきたマンC派の市民が、一抹の不安を覚えても不思議ではなかった。
天国と地獄を6度も行き来した末に掴んだ奇跡の優勝。
実際、優勝の瞬間は、キャプテンのバンサン・コンパニが「二度と御免」と苦笑した悲喜劇の末に訪れた。優勝が確定したのは、後半ロスタイム中の94分。優勝への望みを取り戻したのは92分。それまでの91分間に、マンC陣営は、天国の首位と地獄の2位を6度も行き来させられた。
マンU先制の知らせが届いた前半20分過ぎ、ゴールが必要になったマンCは、引いて守るQPRを攻め切れずにいた。39分、パブロ・サバレタに1年ぶりのゴールが生まれたが、4分後にはヤヤ・トゥーレを怪我で失った。48分には、ジョレオン・レスコットのミスからジブリル・シセの同点弾を浴びた。56分、バートンがカルロス・テベスに手を上げて一発退場となったが、66分の得点は10人のQPRに生まれた。