MLB東奔西走BACK NUMBER
統一球はメジャー球より飛ばない!?
MLB側から考える本塁打減少の理由。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKyodo News
posted2012/05/13 08:01
統一球の導入前とその後で、ほとんど成績が変わっていないターメル・スレッジ。昨年は故障で出場試合数を減らしたが、本塁打も20本以上(打率は向上)という活躍をみせていた。
メジャーでも数字に表われている“投高打低”の現実。
また事務折衝で選手会からは、統一球になって本塁打が減り、野球に「面白みがなくなった」という意見も出たと聞く。確かに本塁打は野球の醍醐味の一つではあるのだが、それで野球の面白みが大幅に減少するものだろうか。
そこで、この表をご覧頂きたい。
●過去10年間におけるMLBの本塁打数、長打率、防御率、無安打無失点試合数
シーズン | 本塁打数 | 長打率 | 防御率 | 無安打無失点試合 |
---|---|---|---|---|
2011 | 4552 | .399 | 3.94 | 3 |
2010 | 4613 | .403 | 4.08 | 2 |
2009 | 5042 | .418 | 4.32 | 1 |
2008 | 4878 | .416 | 4.32 | 1 |
2007 | 4957 | .423 | 4.47 | 3 |
2006 | 5386 | .432 | 4.53 | 0 |
2005 | 5017 | .419 | 4.29 | 0 |
2004 | 5451 | .428 | 4.46 | 0 |
2003 | 5207 | .422 | 4.40 | 0 |
2002 | 5059 | .417 | 4.28 | 1 |
過去10年間のメジャーの本塁打数、長打率、防御率、無安打無得点試合数(完全試合も含む)をまとめたものだ。日本ほどではないにせよ、ここ数年メジャーでも“投高打低”の傾向は顕著なのである。
その理由としては、2006年に禁止薬物を本格的に取り締まるための厳格な処分制度(通称3ストライク・ポリシー)が導入されたためとも言われている。
特に昨年は、長打率は4割を切り、さらに防御率も4点を下回った。それでも昨年の観客動員数はメジャー史上5番目に多い数字を記録するなど、本塁打が減っても確実にファンは球場に足を運んでいるのである。それは、本塁打にも負けない魅力がそこにあったからにほかならない。
今年もすでに完全試合と無安打無得点試合がそれぞれ一度ずつ達成され、ナ・リーグの防御率部門ではトップ10に1点台が並び、ア・リーグでも2点台に留まるほど、顕著な“投高打低”は続いている。