欧州CL通信BACK NUMBER
ついに発見されたバルサ攻略の公式。
モウリーニョが作り上げた戦術を解く。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byKazuhito Yamada/Kaz Photography
posted2010/04/30 11:50
ついに明かされるバルサ攻略の公式。その内容とは?
自陣エリア前、中央にサネッティ、サムエル、ルシオの人を並べ、左右のサイドはエトー(モッタ退場前まではキブ)とマイコンに任せた。
3人のCBの前には、カンビアッソとキブの2人が居座り、イブラヒモビッチの下でボールを受けようとするメッシのためのスペースを消した。
こうしてインテルのペナルティエリアから3~4メートルのゾーンは、かつてないほど選手が密集した場所になった。
比較的スペースのあるサイドからアウベスが何度もクロスを送ったが、ルシオとサムエルという空中戦に強い巨人たちの前では、まったく効果がなかった。
これはバルサの敗北ではなくインテルの勝利だ。
「完璧な勝利。人生最高の負け試合だ。この勝利はポルトで優勝した時よりも嬉しい」
終了のホイッスルが鳴り、カンプノウのピッチを思う存分に駆けたモウリーニョは満足そうだった。彼にとっては'03-'04年シーズンのポルト以来の決勝となる。
一方のグアルディオラは「チームはやれることはやった。サポーターに謝ることなどはない」と言ったが、2試合を通じてバルセロナにキレがなかったのも事実だ。
第1戦は明らかに移動の疲労が出ていたし、第2戦ではスペースがなかったといえど、メッシやイブラヒモビッチは本来の動きではなかった。
メッシ以外に、個人で局面を打開できる選手、つまりイニエスタがいれば……と思ったファンは多かったに違いない。
ただ、これはバルサの敗北ではなく、あくまでもインテルの勝利だ。
「アンチフットボールの勝利」
「プレーしようとしないものが勝った」
翌日のカタルーニャの地元紙には、例によって批判が並んだが、どれも苦しい言い訳に過ぎない。
バルサはこれまでにもCLでは似たようなことを経験している。2季前のレンジャーズ戦しかり、そして昨季の準決勝チェルシー戦もそうだ。昨季は終了間際にイニエスタが決めチェルシーを蹴落とした。しかしそんなあと1点は、今回はついにやってこなかった。
攻めることの意味が際立った昨季とは対照的に、完成された守備組織の重要性が露わになった準決勝の180分間だった。